昼下がりの王都雀荘は、窓から射し込む光で少しだけ暖かかった。いつもなら牌を打つ音が響く店内も、今日はどこか静かだ。客はまばらで、奥の物置部屋に置かれた古い麻雀卓の上には、見慣れぬ牌が二種類、光を放っていた。一つは淡く赤く輝く**《炎牌(えんぱい)》。もう一つは氷のように透き通った《氷牌(ひょうはい)》**だ。「……これが、魔法牌?」ミミが恐る恐る手を伸ばし、赤く輝く炎牌に触れると、指先にじんわりと熱が伝わった。「わっ、ほんとにあったかい!」「当たり前だ。炎の魔法が封じ込められているからな」セディリオが腕を組んで説明する。 彼の声は、その日差しとは裏腹に、張り詰めた緊張感を帯びていた。「王都大会の後半戦からは、この魔法牌が混ざる特別ルールが適用される。牌そのものに魔法が宿り、戦況を根底から覆す可能性を秘めている」「ルールに魔法まで入ってくるなんて、さすが異世界の麻雀ね。奥が深いというか、厄介というか」リリィは炎牌と氷牌を交互に眺めながら、微かに笑った。彼女の目には、単なる物珍しさではなく、未知のルールに対する知的好奇心がきらめいている。「……でも、魔法ってことは、ただの飾りじゃないんでしょ? どんな効果があるのか、具体的に教えてもらえる?」「ああ。まず、《炎牌》だ。これは特定の役を完成させた時に点数を倍化させる力を持つ。ただし、その力は捨て牌が一巡するごとに増していく。つまり、長い局になるほど、炎牌の和了の破壊力は増していく。これは**“炎の祝福”**と呼ばれている」ミミは驚きのあまり、口に手を当てた。「点数が倍になるなんて……! じゃあ、炎牌を引いたら、なるべく局を長引かせた方がいいってことですか?」「そう単純でもない」と、リリィがセディリオの言葉に割り込んだ。「局を長引かせれば、他の人が先に和了してしまうリスクも高まる。それに、他の人に炎牌を引かれて、逆に大打撃を受ける可能性もある。炎牌は、ハイリスク・ハイリターンな火力増強の牌というわけね」「その通りだ」セディリオが頷く。「そしてもう一つ、**《氷牌》だ。これは《炎牌》とは真逆の効果を持つ。氷牌を切った瞬間、場の流れを一時的に凍らせ、山の残り牌を一巡分、保留する。全員が同じ牌で一巡を回すことになる。これは“氷結の呪縛”**と呼ばれている」「保留って……つまり、一巡分
Last Updated : 2026-08-13 Read more