All Chapters of こちら、キッカイ町立図書館フシギ分室・怪奇現象対策課! ~キッカイ町の奇怪な事件簿〜: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話 洗濯物はなぜ乾く?

 いつものように洗濯物を干そうとベランダに出た時だった。 ほとんど同じタイミングでお隣の木井さんもベランダに出てきた。 手にはライターと線香。 日課の一服の時間だったようだ。「こんばんは。偶然ですね」 見なかったことにはできないので、先手を取って挨拶する。 木井さんは私がいるのに気付いていなかったのか、小さく飛び跳ねた。 それから私と洗濯物が入ったかごを交互に眺め、困り顔をした。「こんばんはー……。タイミング失敗しちゃったなぁ」「吸われるんでしたらお気になさらずどうぞ!」「いやいや、臭いが付いちゃいますよ」 言いながら大げさに手をぶんぶんと振る木井さん。 マイペース具合と言い、どこか結城ちゃんに似ている気がする。「まだ干す前ですし。木井さんさえ良ければ吸ってる間にちょっとお喋りしましょうよ!」 私の申し出に木井さんは子供の用に目を輝かせる。「本当に吸っちゃって大丈夫ですか?」「嫌いな臭いじゃないし、気にしませんよ」 私が応えると、彼はポケットからライターと線香を一本取り出して慣れた手つきで火をつけた。 真っ白なケムリが風に揺られながら緩やかに夜空へ昇っていく。 それをぱくりと口に含んで、木井さんは幸せそうに笑った。「いやぁ、実は僕禁煙しようと思ってたんですけどね。失敗しちゃったんです」「禁煙? 健康診断で引っかかったりしたんですか?」「いや、うちの家内が嫌だって言ってまして。仏壇もないのに部屋が線香臭いのは耐えられないって」 木井さんは寂しそうに零して、細くケムリを吐き出した。 龍のようにくねくねと身をよじらせながらこちらへ向かってきたケムリを捕まえようと手を伸ばしたけれど、触れた所から崩れて逃げられてしまう。「次吸ったら出て行くって言われてるんですけど、どうしてもやめられなくて。こうやって家内がお風呂に入ってる隙に吸いに出てるんですよ」「えっ、それって大丈夫なんですか
last updateLast Updated : 2026-08-15
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第12話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・壱

「すいません、あの……」 私がいつも通り出勤した朝のこと。  伏木分室の建物へ入る直前で誰かに呼び止められた。 振り向いてみると、そこに立っていたのは制服を着た男の子だった。  声変わりをしていないところを見るに、中学生だろうか。  この辺りでは見たことのない制服だけど……。「あの、これ。お願いします」 言いながら男の子が差し出してきたのは真っ赤なバラの花束だった。「えっ?」 「学校が終わったらまた来ます!」 呆然とする私に花束を押し付けるように渡した男の子は、路肩に停めていた自転車に飛び乗ると逃げるように走り去ってしまった。「えっ? えええっ!!????」 元カレからですら受け取ったことのない大きな花束を抱え、私は伏木分室に駆け込んだ。 「香塚先輩、本当に心当たりはないんですか?」 「ないない! 制服も見たことないやつだったしさ」 花束を抱えて事務所に入った私は案の定結城ちゃんに詰問された。  逆の立場だったら私もそうしていただろうから納得はできるんだけど……―――。「場合によっては警察沙汰ですよ?」 結城ちゃんは睨みをきかせながらスマホを握りしめている。  この誤解を解くにはどうしたらいいんだろう?「妙にキレイだし、これって造花っスかねー?」 「あっ、ちょっと!」 向かいの席で私と結城ちゃんのやり取りを傍観していた真藤くんが間に割り込んできたかと思うと、花びらを一枚つまんで引っ張りはじめた。  制止しようと手を伸ばすも間に合わず、プツッと小さな音を立てて分離する赤い花びら。  その赤はじわりと滲み、真藤くんの指を汚した。「ゲッ!」 手を振って花びらを放り出すとズボンにゴシゴシと擦りつけて、真藤くんは気味悪そうにバラの花束を見遣る。  机の上に落ちた花弁の付け根から、ぽたりと赤い雫が落ちた。「なんでしょうね
last updateLast Updated : 2026-08-19
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第13話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・弐

 三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだけれど、私たちは文殊にはなれなかった。 うんうんと唸ってノートにメモを取ってみたり目の前の花束をくまなく眺めてみたりして得られた答えは「わからない」。 ただそれだけだった。 降参した私たちは小津骨さんに助けを求めた。「なるほどねぇ……」 小津骨さんは難しい顔をしながらバラの花束を手に取り、確かめるように香りを嗅いだ。「うーん、別段血の匂いがするってわけでもないわね。 見た目、香り共に一般的なバラと大きな差はなし。血のような液体が出るのは花びらが落ちた時だけ?」 たとえば、と言いながらカッターナイフで一本のバラの茎に傷をつけた。「こうすると出たり……するわね」 まるで指を切ってしまった時のように、茎から赤い液体がじわりと滲んで溢れ出してきた。 茎を伝って流れ落ちる液体を指で掬うと、迷うことなくぺろりと舐め取る。「ふぅん。A型」「えっ!? 小津骨さん舐めるだけでそんなことまでわかるんですか!!」「やだ、冗談よ。さすがにそこまではわからないわ」 騙された。 これまでにないくらい鮮やかに。 小津骨さんならそのくらいのことを軽くやってのけてしまいそうだから疑いもしなかった。「それにしても不思議ねぇ……」 言いながら、小津骨さんの指がバラの茎に付いた傷をなぞる。 この時にはもう指につく血の量がほんの少しになっていた。「かさぶたが出来てきてるわ」「本当だ……!」 小津骨さんの手元を覗き込むと、たしかに傷の表面が乾きはじめている。 なんだか気味が悪い。 そう感じたのは私だけじゃなかったようで、結城ちゃんや真藤くんも苦い顔をしている。「あのぉ~」 玄関の方で子供のような声がした。 今は子供の相手をしてる場合じゃないんだけどな
last updateLast Updated : 2026-08-22
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第14話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・参

 件の広告を作るよう指示を出したのは、案の定桂田部長だった。 写真の合成に関しても小津骨さんがそういう企画に乗ってくれるタイプではないとわかっていて苦肉の策でやったのだと白状したらしい。 桂田部長の言い分としては「町民からの情報提供もスムーズになるんだからいいじゃないか」ということだけど、それを聞いている間の小津骨さんの表情は鬼のようだった。「こちらで把握していないことに急に対応しろなんて言われても困るんです。町の方々から情報や物品を募るにしても、これからは私に一声掛けてからにしてください!」 うん。 小津骨さんの言ってることは何も間違ってない。 ド正論だ。 その後の桂田部長の声は急激に小さくなり、もにょもにょ言いながら電話は切れてしまった。 しかし、小津骨さんの剣幕を見ていた慧くんはすっかり萎縮してしまっている。 うつむいたままで小さな声を漏らした。「なんか……ごめんなさい。僕のせいで……」 そのままカバンを手に取って立ち去ろうとする。「いやいや! 慧くんは何も悪くないよ!」「そうそう! このおば……お姉さんも慧くんが来たことには怒ってないから! ね?」 私と結城ちゃんが必死にフォローに回って、どうにか慧くんを引き留めることに成功した。 一瞬突き刺さった小津骨さんの視線が恐ろしいけど。「ところでさ、この花って転校前の学校でもらったんだよね? 前にいた学校もキッカイ町にあるの?」「ううん、隣の県」 慧くんの返答に私たちは顔を見合わせた。 隣の県からわざわざ花束を買いに来るとは思えないし、もしかして、これって全国的に起きてる事件!?「どこで買った花かなんて、もらった人にはわかんないもんね。困ったなぁ……」「わかるよ」「だよねぇ……って、え!?」 慧くんの返答に驚きすぎて声がひっくり返ってしまっ
last updateLast Updated : 2026-08-26
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第15話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・肆

 次の朝、出勤すると先に来ていた小津骨さんと真藤くんが何やら出かける準備をしていた。「あれ? 今日ってどこか訪問の予定ありましたっけ?」「ちょっと急なんだけど紺野生花店の場所がわかったからお話を聞きに行ってみようと思って。申し訳ないんだけど香塚さんと結城ちゃんはここに残っていつも通り仕事をしてて欲しいのよね」「了解です」 すぐ後に出勤してきた結城ちゃんにも同じような説明をして、小津骨さんたちは伏木分室を出発していった。 順調にいけばお昼頃には戻って来られる予定らしい。「それじゃ、私たちも仕事始めますか!」 二人を見送った私たちは席に着く。 ひとまずSNSを使って情報収集をするところからスタートだ。「ワタシ、この怪異が起こるようになってからってそんなに時間は経ってないんじゃないかと思うんです。じゃなきゃもっと大きな噂になってるはずですから」 言いながらスマホとパソコンの二台使いで結城ちゃんは作業を進める。 私も遅れまいと画面に集中するのだが……ない。 須鯉造園でバラを買ったという書き込みはあっても、そのバラから血が流れたなんて書いている人はいないのだ。 「どう? ありそう?」 たっぷり二時間は画面とにらめっこをしてから私は結城ちゃんに声を掛けた。 スマホとパソコンを交互に睨んでいた結城ちゃんは、ばんざいをして大きく横に首を振った。「お手上げです」「だよね……。こっちも同じ」「全部のバラが血を流すってわけじゃないんですかねぇ?」 お手上げだよぉ、と弱音を吐く結城ちゃんと共に視線を向けたのは、もう何度も目を通している怪異報告書の束だった。「寄せられた怪異報告書を見た感じ、異変が起こるようになったのはここ一年半くらいのようなんですよね。だけど、それ以外に情報がなくて……。せめて体験者に共通項とかがあればなぁ」「この一年半での変化ねぇ。須鯉造園のバラって昔からあったのか、
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第16話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・伍

 伏木分室から須鯉造園のある名園自然公園までは車でおよそ三十分。 その移動の間に助手席に座る小津骨さんが紺野生花店で仕入れた情報を私たちに教えてくれた。「紺野生花店は紺野さんご夫婦が経営している花屋さんだったんだけど、そこの奥さんの弟さんのお嫁さん――慧くんの同級生の夕花ちゃんから見たら叔母さんね――のお父さんが須鯉造園の会長なんですって。そのご縁でいくつかのお花は須鯉造園から仕入れているみたいね。 でも、花から血が出てきたなんて話は聞いたことがなかったみたいでご夫婦も驚いてたわ」「そんな繋がりがあったなんて……。すごい偶然ですね」「問題のバラはいつも須鯉造園から仕入れてるんですか?」 結城ちゃんの問いかけに小津骨さんは首を横へ振った。「あれは慧くんのために特別に送ってもらった花束だったらしいわ。 ……その、娘さんが、ね。慧くんに片思いしてたらしくて」 声をひそめながらこっそり教えてくれた甘酸っぱい青春ストーリーに絶叫したのは結城ちゃんだった。「尊い! 尊すぎますって!! 死んじゃう! 浄化されて死んじゃうっ!!!」 結城ちゃんは両手で顔を覆ってバタバタと体を左右にゆする。 その衝撃で軽自動車も右へ左へ蛇行しはじめた。「結城ちゃんっ! 落ち着いて!!」 このままじゃ事故が起きる。 結城ちゃんを止めることが隣に座る私の責務となった。 とはいえパワハラ、セクハラ、それに準じるものはご法度。 細心の注意を払いながら……。「着いたっス~!」 緊張感に欠ける真藤くんの声に初めて救われたような気持になった。 結城ちゃんを止めることで必死になって気付かなかったけれど、真藤くんが運転する車は名園自然公園の駐車場へゆっくりと侵入して行く。 中央地区の商店街や布佳海地区のビーチなどと並ぶキッカイ町での数少ない観光・デートスポットということもあってか、平日の昼間だという
last updateLast Updated : 2026-09-02
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第17話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・陸

 真藤くんと真藤町長は二人並ぶとたしかによく似ていた。 顔自体はそこまで似ていないのだけど、よく笑うところとか雰囲気から親子の血のつながりを感じる。「こっちは……大学の友達かな?」「サークルの先輩だよ」 笑顔を向けてきた町長に答えようとした私たちを制するように、真藤くんが先に口を挟んだ。 どうして嘘をつくのかわからないけれど、いつもと違う真藤くんの様子を見て私たちは話を合わせることにする。 その後もいくつか会話を交わしていた二人の間には不思議な空気が流れていた。 終始にこやかに話しかける町長に対して真藤くんは面倒臭そうな返答をし続けているのだ。 まるで早くこの場を立ち去りたいかのように……。「ところで怜太、母さんは元気か?」「ええ、おかげさまでこの通りよ」 不意に私たちの後ろから声が聞こえた。 驚いて振り向くとそこに立っていたのは小津骨さんだ。「え? ええ?????」 壊れた扇風機のように首を振って三人を交互に見る。 真藤町長がお父さんで、小津骨さんがお母さんで?? これは何のドッキリだろう? いや、でも小津骨さんと真藤くんが親子なら妙に親密なのも真藤くんの扱いがちょっと雑なのも納得できないこともない、かも……??「美枝、新しい課を任されたんだってな。ええと、何だったか……心霊課か?」「怪奇現象対策課よ」「そうだった、そうだった。どうだ? 順調か?」「おかげさまで。じゃ、忙しいから行くわね」 親しげに語りかける真藤町長と小津骨さんの温度差がすごい。 っていうか小津骨さんちょっと怒ってる?? 困惑する私と結城ちゃんを置いて三人の会話は早々に終了した。「帰るわよ」 言うが早いか、小津骨さんは真藤くんに何かを告げてそそくさと歩き出してしまう。 名残惜しそうにその後ろ姿を見送る町長に秘書ら
last updateLast Updated : 2026-09-05
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第18話 怪奇レポート005.落ちた花弁から滴る血・漆

 結局、劇的な何かが起きることはなく、真藤くんが呼んだ警察官によって善蔵さんと耕一郎さんは任意同行されていった。 その後の捜査でバラ園の土の中から人骨の破片とみられるものが見つかり、連日ニュースで取り上げられている。 二人が逮捕されるのも時間の問題のようだ。 当然のように須鯉造園は営業休止になった。 バラの返品を求める人も少なくないため、ちょっとした騒動にまでなっているらしい。 特に影響が大きかったのは慧くんももらっていたコンクールで賞も取ったという品種で、過去の受賞も含めすべてが取り消しになった。 事情を知らない慧くんには、小津骨さんが紺野生花店までわざわざ出向いて自費で購入した新しい花束を改めて渡していた。 そこには夕花ちゃんからのメッセージカードがついていて、二人はLIMEで連絡を取り合うようになったらしい。「それにしても、小津骨さんって本当にすごいんですね」「ほんと! あの時は名探偵がここに!! って思いましたよ」 興奮冷めやらぬまま私と結城ちゃんに対し、小津骨さんは浮かない顔をしている。「……どうしたんですか?」「二人とも、おかしいと思わなかった?」 不意に向けられた問いかけに私は首をかしげる。 ピンと来ていないのは結城ちゃんも同じのようだった。「全部嘘なのよ」「え?」 小津骨さんの言っている意味がすぐには理解できなかった。「よく考えてみて。専門的な血液の鑑定ができるところなんてキッカイ町みたいな小さな町にはないし、一日足らずで終わるはずないでしょ? それに、報告書には情報提供者の職業なんて書いてないし」「で、ですよね……。でも、それならどうして事件のことがわかったんですか?」「夢にね、出てきたのよ」 遠くを見つめるように視線を滑らせた小津骨さんはポツリと呟いた。「私、あそこのおばあちゃまには良くしてもらっててね。最近見かけなくなったから心配してたんだけど……。
last updateLast Updated : 2026-09-09
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第19話 行方知れずの『ますたぁきい』・壱

 四月三十日、快晴! ゴールデンウィークが丸ごと休みだなんて夢みたいだ。 ちょっと肌寒かった季節にも別れを告げて、照り付ける日差しは初夏の訪れさえ感じさせる。「こーづかちゃーんっ!」「韮居先ぱーい!」 聞き慣れた声に名前を呼ばれて、反射的に叫びながら大きく手を振った。 向こうから淡い水色のブラウスに黒のスキニーパンツ姿の先輩が小さい歩幅で駆け寄ってくる。「ごめんごめん! 家出るのが遅れちゃって」 息を切らしながら合流した先輩に私はスマホの画面の時計を見せる。「ぴったり十時! 遅刻じゃないですよ」 三月末に異動になってからだから、先輩と会うのは一ヶ月ぶりだ。 嬉しくて楽しみで、九時半には待ち合わせ場所のキッカイ駅前広場に着いていた私は、勢い余って二人ぶんのアイスコーヒーを買ってしまっていた。 それを手渡すと韮居先輩は目を輝かせてすぐに口をつけた。「さっすがこーづかちゃん。気が利くなぁ」「そんなことないですよ〜。ところで韮居先輩、今日はどこのお店に行くんですか?」「んーとね、『ますたぁきい』ってお店なんだけど……こーづかちゃん、今日はそんなかしこまってなくていいんだよ?」「あ、そっか!」 久しぶりすぎてつい仕事モードになっちゃってた。 今日はプライベートだから「かなちゃん」でいいんだ! 韮居歌那依先輩、通称かなちゃん。 私が新人としてキッカイ町役場に入った時に指導役でついてくれた先輩だ。 キッカイ町そのものが初めての土地な私のため、かなちゃんは仕事だけでなく私生活の面でもたくさんサポートしてくれた。 そして、気が付くとお互いの予定が空いている週末にはこうして一緒に出掛けるほどの間柄になっていた。「……で、ますたぁきいってお店はどこにあるんですか?」「今日は岡志奈の方みたい」「今日は?」 かなちゃんの言い回し
last updateLast Updated : 2026-09-12
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第20話 行方知れずの『ますたぁきい』・弐

「こーづかちゃん、伏木分室ってどんな感じのとこなの?」 アイスコーヒーにガムシロップとミルクを入れてかき混ぜながら、かなちゃんが問い掛けてきた。「どんなところ、かぁ……。別に普通ですよ? 仕事の内容はちょっと変わってるけど、一緒に仕事をしている人たちはみんないい人ですし」「へ〜。あそこの館長って町長の前の奥さんなんでしょ? 私会ったことがないんだけど、どんな人なの?」 かなちゃんが思っていた以上に食いついてきたので驚いた。 っていうか小津骨さんが町長の奥さんだったって話は私ですら最近知ったばかりなのに、どうしてかなちゃんが知っているんだろう。 私以外の人たちの間では知られていたことなのかな?「小津骨さんは……頼れる姉御みたいな感じかなあ。美人で仕事もできて、魔性の女って雰囲気もあるし。とにかくすごいですよ」 すごい、なんて言葉で言い表しきれる人じゃないんだけど、すごい以上の表現が出てこない。「他には? どんな人がいるの?」「あとは新卒で入ってきた結城ちゃんと、大学生アルバイトの真藤くんかな。二人とも面白い子ですよ」 そういえば真藤くんが町長さんの息子なのを忘れてた。 真藤くんの名前を出しちゃまずかった? 言い終えてから不安になってきた。「忘れ物、忘れ物!」 私の心配事を蹴散らすような慌ただしさで木井さんが戻ってきた。 いつの間にかエプロンから着替えて魔術師のような黒いフード付きのマントを纏っている。 そして、雑貨がひしめく飾り棚に向かうとひったくるように水晶玉を取り上げ、再び奥の部屋に戻っていった。 嵐のような出来事に私とかなちゃんは目を丸くした。「えっと……何の話をしてたんだっけ?」「何でしたっけ? ああ、伏木分室はいい人ばっかりだよって話か」 あまりのインパクトに二人揃って直前の記憶が飛んでしまった。 おかげで触れたくないところに触れずに済んだけど&he
last updateLast Updated : 2026-09-16
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