晟峻は、紺色の警察官の制服をきちんと着こなしていた。ただでさえ端正な顔立ちがいっそう精悍に映る。だが、よく見れば顎には青い無精ひげが浮き、充血した目には隠しようのない疲労がにじんでいた。心配そうな顔をしながらも、その口調には責めるような響きがあった。晟峻はごく自然に泉澄の前にしゃがみ込み、靴を履かせようとした。「こんな大怪我をしていたのに、どうして俺に知らせなかったんだ?」だが、泉澄はすっと足を後ろへ引き、差し出された手を避けた。晟峻の手は宙に取り残された。彼が眉を寄せて見上げると、泉澄の凪いだ水面のような瞳とぶつかった。そこにはもう、何の感情も浮かんでいなかった。「大した怪我じゃないわ。あなたは仕事を優先して」淡々と告げると、泉澄は自分で靴を履いて立ち上がり、退院の書類を手に病室を出ていった。ひと回り小さくなったように見える背中を見送りながら、晟峻の胸に正体不明の不安がよぎった。泉澄が、どこか変わってしまった気がする。晟峻はあとを追った。泉澄は一人で退院手続きを済ませ、窓口で薬を受け取ると、そのまま病院前のバス停へ向かった。すぐ後ろに晟峻がいるというのに、彼女は振り返って甘えることも、来るのが遅かったと責めることもなかった。以前なら彼の胸元に寄りかかり、顎の無精ひげを撫でながら、仕事で無理をして体を壊さないでと何度も言ったはずなのに。訳のわからない苛立ちと焦燥に駆られ、晟峻は泉澄の手首をつかんだ。唇を引き結び、低い声で尋ねる。「事故のことで怒ってるのか?それとも、満の……」泉澄は言葉を遮り、つかまれた手をゆっくりと引き抜いた。その声は冷淡なほどに静かだった。「どちらでもないわ。晟峻、もう済んだ話はしたくないの」再び手を振り払われ、晟峻は焦ったように追いすがった。「だったら、どうして――」そのとき、バスが停留所に滑り込んできた。泉澄はもう晟峻を見ようともせず、ためらいなく乗り込んだ。乗客の流れに押されながら、車内の中ほどまで進んで立つ。晟峻も口を引き結んだままあとに続いた。泉澄の背後まで人をかき分けて進むと、大きな体で人波を遮り、彼女を守るように立った。窓の外を流れていく街並みを見つめ、すぐ背後に晟峻の体温を感じているうち、泉澄の意識は5年前――初めて彼と出会った日へと遡っていった。あの
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