【4月5日。冷たい雨が降り続き、晟峻は何日も脚の痛みに苦しんでいる。犯人を逮捕したときの古傷だ。見ているだけで胸が痛む。隣に住む佐藤佳代(さとう かよ)さんが、栄養満点のスープの作り方を教えてくれた。晟峻はおいしそうに飲み、私を抱きしめてキスしてくれた。とても幸せ】【9月3日。休みを取って誕生日を祝うと言ってくれたのに、また同僚に呼ばれて出かけてしまった。仕方がない。仕事のほうが大切だから。お祝いに彼が好きな手料理を作り、晟峻の分も取っておいた。二人で白髪になるまで添い遂げたい】【3月2日。電球を替えられるようになった。感電して、指先が黒くなった。指先が焼けつくように痛かった】【5月20日。今日、重い荷物を運んでいて転び、気を失って病院へ運ばれた。流産したと医師に告げられた。妊娠2ヶ月だった。長いあいだ泣いたけれど、晟峻には言わないと決めた。晟峻まで悲しませたくない。ごめんね、赤ちゃん。お母さんが守ってあげられなかった。悪いお母さんで、本当にごめんね】そのページはしわだらけで、乾いた涙の跡に覆われていた。新たな涙が1粒、日記へ落ちた。ノートの端を握りしめる晟峻の指は、血の気を失って青白くなっていた。しんと静まり返った寝室に、必死に押し殺したすすり泣きが響いた。晟峻の手は激しく震えていた。慌てて紙に落ちた涙を拭い、次のページをめくる。……【8月1日。お腹が日に日に大きくなり、出産予定日が近づいている。とても怖い。でも晟峻は別の市へ応援に出ている。外へ出たときに転んでしまったけれど、佳代おばさんが見つけて病院へ連れていってくれた。難産で、もう少しで命を落とすところだった。もし私がいなくなったら、娘はどうなるのだろう。私がこの子をしっかり守らなければ】【8月15日。晟峻はまだ帰ってこない。会いたい。恨めしい。腹が立つ。それでも心配でたまらない。早く帰ってきて。どうか無事でいて】【9月5日。晟峻が帰ってきた。思いきり叩いてやろうと思っていたのに、ひどく疲れ、申し訳なさそうな顔をしていた。見ていると胸が痛んだ。晟峻だって、きっと私のそばにいたかったのだ。もう責めるのはやめよう】【10月10日。紗耶という女性警察官が晟峻を見る目は、どう考えてもおかしい。でも晟峻は、私の考えすぎだと言った】そのあとの日記は、ほとんどが紗耶につい
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