――― 異世界 王宮 執務室(夜)――― レオンは、一人窓の外を見つめていた。 月明かりが、彼の横顔を照らしている。 しかし、その表情はいつになく険しかった。 シグルは彼の後ろで息を潜め、王の決断を静かに待っていた。「シグル」「はい」 レオンは窓から目を離さず問う。「お前は、どう思う」 レオンの問いに、シグルは慎重に答えた。「……神官長の懸念は、理解できます」「そうか」 レオンの声は、どこか疲れているように聞こえた。「ただ……」 シグルは言葉を選んだ。 一瞬、躊躇するような間があった。「創造神を『異質なもの』と呼ぶことには、抵抗があります」 レオンは小さく笑った。「お前は、カヤを信じているんだな」「もちろんです」 シグルは即答した。 その声には、一点の迷いもない。「陛下を、ここまで導いてくださった方です。私は、カヤ様を信じております」 レオンは、窓の外に広がる星空を見上げた。 無数の星が、静かに瞬いている。(カヤ……お前は、どう思う?) レオンは目を閉じ、心の中でカヤに語りかけた。 レオンは、息を止めて数秒待った。 やがて——由奈の声が響いた。『……うん、聞こえる』 レオンの肩から、わずかに力が抜けた。(神官長が、お前のことを「異質なもの」だと言っている)『……そうだね』 由奈の声は、少し震えていた。 不安と、何か決意のようなものが混じっている。(浄化儀式、というものを提案された。お前はどう思う?) 由奈は、しばらく黙っていた。 レオンは、その沈黙を待った。 彼の手が、無意識に窓枠を握りしめている。 やがて、由奈の声が聞こえた。『……王様。浄化儀式受けて』(何?) 思いもしない返答に、レオンの眉が上がった。『ここで拒否したら、きっと神殿が敵に回る。セレスからの信頼も失って、民衆もあなたを恐れるようになる』 由奈の声は必死だった。 まるで、何かから守ろうとするような強い意志が感じられた。『こういう場合、そういう展開になりやすい。特に国を担う人が浄化を拒否すると、「悪神」と揶揄《やゆ》されて、味方が次々と離れていくわ』 レオンの表情が、複雑に歪んだ。(だが……)『お願い、信じて。この先の事は大体読めてる』 由奈は続けた。 その声は震えながらも、どこか確信
Last Updated : 2026-09-10 Read more