翌日の昼になって、東はようやく目を覚ました。ベッドのそばで付き添っていた桂子は、喜びに顔を輝かせて言った。「東、やっと目を覚ましたんだね。本当に心配だった。先生が、体に問題があるかもしれないから、入院して検査を受けた方がいいって」しかし、東は力なく首を横に振った。彼は腕につながっていた点滴の管を乱暴に引き抜き、よろけながらもベッドから下りると、うわ言のように何度も繰り返した。「朱音を連れ戻さないと……」その様子を見た桂子はたちまち腹を立て、東の服をつかんで怒鳴りつけた。「何を今さら捜すっていうんだい!あんた、前はいつも朱音には教養がない、気も利かない、麗奈の方が好きだって言ってたじゃないか!」「違う」東は即座に否定した。「俺がずっと愛してきたのは朱音だ」「それなら、どうして何かあるたびに麗奈ばかり庇ってたんだい?」その桂子の一言に、東の頭は真っ白になった。そうだ。何か起きるたび、自分は決まって麗奈を庇い、朱音には目もくれなかった。朱音を死なせたのは俺だ。……俺が、朱音を殺したんだ!そこへ、洗った果物を持った麗奈が病室に入ってきた。彼女は果物を置くなり東に抱きつき、甘えるように言った。「東さん、お姉ちゃんがいなくなっても、私がずっとそばにいます」桂子も横から口を挟む。「そうだよ。あんたと麗奈こそ、お似合いの2人じゃないか」「あり得ない!俺が式を挙げるのは朱音だけだ!」東は麗奈を力任せに突き放すと、そのまま狂ったように病院を飛び出していった。東が再び家へ戻ってきたのは、それから7日後のことだった。近隣の町をくまなく捜し回り、あらゆる手を尽くし、権限を越えて鉄道の利用記録まで調べたが、朱音の足取りはどこにも残っていなかった。すべての手がかりが、ただ一つの可能性を示している。朱音は、本当に死んでしまったのだ。「そんなはずはない!朱音はまだ俺と式を挙げていないんだ。俺を置いていくはずがない!」東は深い悲しみに打ちひしがれていた。彼が呆然と誰もいない庭を眺めていると、ふと、そこに朱音の姿が見えた気がした。朱音は冷たい水で洗濯物を懸命にもみ洗いしている。水仕事で両手は白くふやけ、傷口からは膿が滲み出していた。東は慌てて声をかけた。「朱音、もう洗わなくていい。
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