沙月ちゃんとトイレから戻る途中、香織が泣きながら部屋から飛び出してきた。「香織? ねぇ、どうしたの!?」 香織はこちらの静止も聞かずそのまま店内へ出ていった。 私は部屋のドアを開け放ち声を荒げる。 「ちょっと、香織に何したの!」「い、いや俺たちは何も……」「上杉の奴が……」 私は黙って上杉を睨みつける。 お兄ちゃんを侮蔑し、その上香織にひどい仕打ちをした上杉に怒りが爆発しそうだった。 そんな私とは対照的に、沙月ちゃんが冷静な口調で上杉に問いかける。 「上杉さん、一体何があったんですか?」「聞いてくれよ沙月ちゃん。実は、俺と香織は昔付き合ってたんだけど……」「はい。香織から聞いたことがあります」 「そっか。それでさっき、香織からもう一度やり直さないかって言われたんだ」「そうなんですか……」「そうなんだよ! だから俺は言ったんだ。『俺と君は釣り合わない。俺は君には勿体ない』ってさ」 そう言って上杉は肩を落とし、落胆の表情を顔に張り付ける。 長口上で見苦しい言い訳なんかして。 白々しい。「……私もそう思います。確かに釣り合わないですよね」「良かった! 沙月ちゃんもわかってくれるかい?」 上杉は顔を上げ、笑顔になる。 そんな上杉に沙月ちゃんは笑顔を崩さず、「えぇ、十分にわかりました」 というと、冷たい視線で射貫くように見下ろす。 そして笑顔を消し、感情の消えたトーンで言い放った。 「アンタみたいなクズ男に香織は勿体ないってね」「なっ……」 上杉は目を丸くしていた。 阿部さんと伊藤さんは部屋の隅でおびえるように縮こまっている。 「行こ
Última actualización : 2026-08-23 Leer más