俺はこくりと頷いた。ばあちゃんはため息をつき、俺の頭を撫でようと手を伸ばしたが、空中でピタリと止め、そのままゆっくりと引っ込めた。「分かってるよ」その声はとても静かだった。「ばあちゃんには、全部手にとるように分かるよ」ばあちゃんは振り返り、戸棚からりんごを一つ取り出すと、きれいに洗ってから骨壺の前に供えてくれた。「お食べ」まるで生きている俺に語りかけるように、優しく微笑んでくれた。「ばあちゃんちには大したものはないけどね、このりんごは甘いから、食べてごらん」俺はその真っ赤なりんごを見つめ、胸の奥がツンと痛くなった。生きている間、俺は丸ごとのりんごなんて一度も食べたことがなかった。家でりんごが出る時はいつも半分に切られ、大きい方が兄さんに、小さい方が俺に渡された。それでも兄さんは、いつもこっそり自分の分を俺に少し分けてくれた。「俺はあんまりお腹すいてないし、りんごは好きじゃないから」と言った。なのに、死んでしまった今、ばあちゃんは俺に、誰の食べ残しでもない、丸ごと一つのりんごをくれたのだ。ふわりと近づき、りんごの前にしゃがみ込む。食べることはできないけれど、そのみずみずしくて甘い香りは、確かに俺の鼻先をかすめた。「甘いかい?」ばあちゃんが尋ねた。俺は力強く頷いた。本当は味わうことなんてできないと、ばあちゃんも分かっているはずなのに。ばあちゃんは笑った。だがその目には、みるみる涙が浮かび、頬を伝い落ちていった。「甘いならよかったよ……」独り言のように呟き、背を向けて、袖で一生懸命に目を拭う。その夜、ばあちゃんはたくさんの話を聞かせてくれた。俺がまだ小さかった頃、俺たちの家に来てくれた時のこと。俺がばあちゃんの膝に頭を乗せ、桃太郎の話や、かぐや姫の話を聞いたこと。3歳の俺が熱を出した時、一晩中そばについて、タオルで体を拭きながら、子守唄を歌って寝かしつけてくれたこと。5歳の時に初めて田舎の実家に来て、ニワトリを追いかけて泥だらけになった俺を、小言を言いながらお風呂に入れてくれたこと。思い出を語るうちに、その声はだんだんと小さくなっていった。「幸人や」ふいに、今にも消え入りそうな声で呟いた。「あんた……もう、行っちまうのかい?」俺はばあちゃんを見つめ、静か
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