私は控室に戻り、エイドリアンに一通のメッセージを送った。【結婚式はキャンセルするわ】10秒も経たないうちに、彼から電話がかかってきた。「エレナ、いい加減にしてくれないか」低く抑えられた声だった。「リヴィアは手首を切ったんだ。医者はもう二度とショックを与えるなと言っている。こんな時に、式のことで揉めるつもりか?」化粧台の上には、指輪のケースが開いたまま置かれている。中には私自身が受け取りに行った、内側にふたりの名前を刻んだ結婚指輪が空しく並んでいた。「エイドリアン。今日は私たちが付き合って7年になる記念日なのよ。半年かけて準備してきた結婚式でもある」「わかってる。けど、今は命に関わる話なんだ。お前はいつも分別のある大人だっただろう。リヴィアを支えてやってくれ」私は沈黙で返した。「彼女は重度のうつ病なんだ。一度でいいからウェディングドレスを着て、俺と結婚したい。それだけがリヴィアの望みなんだよ。そもそも、法的な効力なんてない。婚姻届はまだ出していない。お前は今でも俺の婚約者だ」手続き上はそうかもしれない。けれどモレッティの世界では、あの祭壇で彼の隣に立った女こそが、一族からドンナとして認められるのだ。彼は一拍置き、声を落とした。「リヴィアが落ち着いたら、明日にでも一緒に婚姻届を出しに行く」「なら、今日の私は何なの?」電話の向こうが静まり返った。「今日は、リヴィアを安心させるための日だ」背後から母の声が聞こえてきた。「エイドリアン、エレナのことでこれ以上時間を無駄にしないで。あの子は昔からリヴィアにきつく当たってきたのよ。リヴィアはエレナほど気が強くないし、体も丈夫じゃない。それなのに、結婚式まで自分だけのものにしないと気が済まないの?もしエレナがこっちへ押しかけて騒ぎを起こすようなら、もう娘じゃないと思うことにするわ」「でもお母さん、今日は私の結婚式だったはずでしょう」「あなたとエイドリアンはもう7年も一緒にいるでしょう。たった一日くらい、我慢できないの?」咎めるように、母の声が険しくなる。「リヴィアは死にかねないのよ。退院してきたばかりなんだから」エイドリアンが再び口を開いた。「エレナ、これ以上騒ぎを大きくするな。外にはモレッティ一族が勢揃いしている。この結
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