専用に設定していた通知音が二度鳴った。円香がSNSを更新したらしい。開いてみると、九枚の写真が投稿されていた。添えられていたのは、「卒業おめでとう。私たちのツーショット写真も、もう百三十二枚になってたね」という言葉だった。秀平が円香の卒業式用の服の襟元を整えている姿。少し身をかがめ、円香の話に耳を傾ける姿。円香の額を指先で軽く弾き、笑みを浮かべる姿。私は改めて、自分のスマホのアルバムを開いた。私と秀平は十四年来の幼なじみで、三年間、周囲に隠れて付き合っていた。それなのに、私たちにはまともなツーショット写真が一枚もない。その事実に、喉の奥がきゅっと詰まった。鉄棒にもたれながら水を飲む秀平の横で、円香はハンカチを手に、秀平の顎に浮かんだ汗を拭っている。私は二人から少し離れたところで足を止めた。秀平はゆっくりと顔を上げ、私を一瞥すると、声をかけてきた。「どうした?なんか元気ないな」「……一緒に写真、撮ろう」せめて、この十四年間を締めくくる記念にしたかった。しかし、秀平は鼻で笑った。「仲がいいほど写真は少ないもんなんだよ。そのくらい分かんない?」円香も笑って言った。「そうだよ、澪菜。秀平の言うとおり。本当に仲がいいなら、写真で証明する必要なんてないよ」秀平はいつものように髪をかき上げた。その指にはめられた指輪が、また眩く光っている。「それに、お前ってカメラ向けられるとすぐ逃げるだろ。ガチガチに固まるし。撮ったって無駄だ」私の顔色が悪いことに気づいたのか、円香は私の肩を抱き寄せ、場を取り繕うように笑った。「澪菜、考えすぎだよ。秀平も澪菜のこと心配してるだけ。写真映りが悪かったら、澪菜が落ち込むんじゃないかって」私はゆっくりとうつむき、スマホの画面を消した。「……分かった」もう、撮らない。この十四年間も、思い出として残す必要はない。
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