「風神セイディ・愛神シェトレイエ――男女の恋情・男女の愛欲を盤上に転がす二柱。その加護・その御手に、我は伏して感謝を奏上いたします」 儀式の構成から、セイディとシェトレイエの二柱を除きます。 代わりに、同じく二柱――わたしは伏せかけていた面を上げ、能うる限りの朗々たる声で呼びかけました。「天秤の柱に我は立つ。天秤の右腕に貴きもの・天と創造の主神ライオス照覧あれ。天秤の左腕に深きもの・大地と夜明けの女神ウルリカ祝福あれ。 比翼の絆を言祝ぐ天神・連理の絆を言祝ぐ地神・魔女の呼び声に応ずるものあるならば、どうかその手を引いていざない給え。此処なる白光の下、比翼連理の在処《ありか》まで――!」 ――ああ。 ああ――ああ! ――掴んだ! そうだったんだ――ああ、そういうことだったんだ。 なんてことだろう、わたしは本当にどうしようもない。心配性で不安ばっかりの、疑りやのバカな娘だった。 彼も、彼女と同じだった。 いつかは、彼女と結ばれて――家庭を持って、共に暮らす日を想っていた。 いつかは、彼女の望みと同じに、ふたりの子供がいる未来を思い描いていた。ただ、そこに至るまでに見ていた道程が、違っていたというだけ。 彼の夢想は、未来は、冒険者としての大望――二人で見てきた夢の先にあった。 冒険者として大功を得て、彼女に何不自由ない暮らしを用意できるように。 いつか生まれる新しい家族が、立派な父親だといつだって胸を張って誇りに思えるような、ただそれだけで人生を越えてゆく支えになれるような、ひとかどの男であれるように。 子供を産んで、それで幸福な幕引きになど、なりはしないから。 その先へ。さらにその先まで。願わくば少しでも穏やかに護られる、長く安穏たる道を敷いてやりたいと――彼は。 ――ああ、だからこそ。 男女の恋情と愛欲を司る二柱ではだめだったの
Last Updated : 2026-09-18 Read more