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All Chapters of 魔女の嫁入り: Chapter 21 - Chapter 23

23 Chapters

21.魔女はひとり銀月の下、祝福あれと夜に詠う(2)

「風神セイディ・愛神シェトレイエ――男女の恋情・男女の愛欲を盤上に転がす二柱。その加護・その御手に、我は伏して感謝を奏上いたします」 儀式の構成から、セイディとシェトレイエの二柱を除きます。 代わりに、同じく二柱――わたしは伏せかけていた面を上げ、能うる限りの朗々たる声で呼びかけました。「天秤の柱に我は立つ。天秤の右腕に貴きもの・天と創造の主神ライオス照覧あれ。天秤の左腕に深きもの・大地と夜明けの女神ウルリカ祝福あれ。 比翼の絆を言祝ぐ天神・連理の絆を言祝ぐ地神・魔女の呼び声に応ずるものあるならば、どうかその手を引いていざない給え。此処なる白光の下、比翼連理の在処《ありか》まで――!」 ――ああ。 ああ――ああ! ――掴んだ! そうだったんだ――ああ、そういうことだったんだ。 なんてことだろう、わたしは本当にどうしようもない。心配性で不安ばっかりの、疑りやのバカな娘だった。 彼も、彼女と同じだった。 いつかは、彼女と結ばれて――家庭を持って、共に暮らす日を想っていた。 いつかは、彼女の望みと同じに、ふたりの子供がいる未来を思い描いていた。ただ、そこに至るまでに見ていた道程が、違っていたというだけ。 彼の夢想は、未来は、冒険者としての大望――二人で見てきた夢の先にあった。 冒険者として大功を得て、彼女に何不自由ない暮らしを用意できるように。 いつか生まれる新しい家族が、立派な父親だといつだって胸を張って誇りに思えるような、ただそれだけで人生を越えてゆく支えになれるような、ひとかどの男であれるように。 子供を産んで、それで幸福な幕引きになど、なりはしないから。 その先へ。さらにその先まで。願わくば少しでも穏やかに護られる、長く安穏たる道を敷いてやりたいと――彼は。 ――ああ、だからこそ。 男女の恋情と愛欲を司る二柱ではだめだったの
last updateLast Updated : 2026-09-18
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22.魔女は夜明けに帰り、寄り添うひばりの巣に眠る(1)

 葬送の祝詞を終え、儀式の道具を片付けて――とぼとぼとおぼつかない足どりで森から引き返した頃には、白々と夜が明けはじめていました。 徹夜のせいで頭がぼんやりしていました。 ふたりが旅立った後、祝詞の最中にわたしは一度泣いてしまっていて、ただでさえ徹夜してしまったうえにそんなことまであったせいで目がしぱしぱしていました。 目の前に映るすべてが、何もかもが頼りなく覚束ないような、そんな感覚。 薄明の日差しが差す森を出て、家の前に着いたときは、思わず安堵の息が零れていました。わたしはお店の裏手に回って、音をたてないようにそっと扉を開けます。「おかえり」「ぁ……」 裏手の玄関のすぐそこで、シオンくんが待っていました。 とっさに何を言えばいいかわからなくなってしまって、あわあわと顔を赤くしながら慌てふためいて。そんなふうにみっともなくうろたえた末に、わたしはようやく、虫が鳴くような声を絞り出すことができました。「ただ……ぃま……」「おかえりなさい」 のろまなわたしの挨拶に、もう一度答えを返してくれます。「疲れたろ。風呂と朝食、どっちから先にする?」「ぁ、う……えと」 お風呂に入ってさっぱりしたい、と真っ先に思いました。 けれど、おなかもとても空いていて、今にもぐうぐうと不平の声を立てそうです。 何より――眠いです。このままベッドに飛び込んで思うさま寝てしまいたい。「あの」「ん?」 けれど。シオンくんの顔を間近で見上げたとき、わたしの胸に去来したのはそれらのどれとも違う、まったく別の答えでした。「ぎゅっ……て、してもらって、いい?」「いいけど」 苦笑混じりに小首をかしげて。声にはしなかったけれど、「どうして?」と不思議がっているのが分かります。「おねがい」「……わかった。おいで」 両腕を開いてくれる、その胸の中へ。 身体を寄せて、額を擦り付
last updateLast Updated : 2026-09-19
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23.魔女は夜明けに帰り、寄り添うひばりの巣に眠る(2)

 ――気が付いたら、目の前に天井がありました。 ぼけーっと天井を見上げて、「ああ、朝かぁ」なんてのんきなことを思いながらごろんと寝返りを打って、「わぁ!!」 跳ね起きました。我に返って。 魔女の長衣を着たまま、わたしはベッドで横になっていました。 帽子やケープ、あと腰に巻いていたポーチなんかはサイドボードにまとめて置いてあって、丈の短いブーツもベッドの足元に置かれていましたが。「ぁっ、え? あれ……あれぇ!?」 ぜんぶ夢だったのでしょうか。いいえ、それはないはずです。わたし、ちゃんと儀式をしてきました。長衣にほんのり移ってしまったらしい香袋の香りからでもそれは分かります。 じゃあ――もしかして、わたし、あのまま眠っちゃった? シオンくんに、抱きしめてもらった……まま? 窓の外を見ると――陽はすっかり高くなっていました。「ぁ……わ、わ。わわわっ!」 あたふたとベッドを降り、狼狽のあまりあやうくこけそうになりながら。 皺になりかけたスカートのすそをぱたぱたと叩いて直し、髪も適当になでつけて。もたもたと靴を履いて、部屋を飛び出しました。 血の気が引く思いで真っ青になりながら、廊下を駆け抜けて、お店へ。「シオン、く――おはよ……!」「あらぁ、フリスちゃん。おはよう」「昨日も大変だったみたいねぇ。ちゃんと眠れた?」「あ。あたし達のことは気にしないで頂戴ね。しっかり休んでなさい?」 ほほほ、と笑いながら口々に挨拶してきたのは、お店に来ていたトスカの女性たち、主婦のみなさんでした。「あ、はひ。おはよ――ござい、ますっ! ぇと……」 あわあわと頭を下げて、挨拶を返すわたし。 みなさんは「ほほほ」と声を合わせて笑うと、三人で囲んでいたもう一人の腕や背中をべしべしと叩きました。 シオンくんでした。困ったみたいな顔で口の端を引きつらせながら、主婦のみなさんに囲まれていました。「……おは
last updateLast Updated : 2026-09-20
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