リーネは有能だ。 朝、私が目を開ける前には部屋にいる。 予定表はもう整っている。 服も、髪紐も、お茶も、なぜか私が探す前に出てくる。「ルカ様、起きてください」「起きてる」「目が閉じています」「心は起きてる」「体も起こしてください」 厳しい。 私は布団の中で少しだけ丸くなる。「今日、何ある?」「午前は衣装合わせ、昼にヴィオラ様との茶会、午後はセリス様から贈答品の確認、夕方は陛下へのご挨拶です」「多い」「減らしました」「これで?」「はい」 リーネは何も悪くない顔で言った。 私は起き上がる。 髪が少し顔にかかった。 リーネがすぐ櫛を取る。 早い。「小童、有能」「誰が小童ですか」 指を指す。「あなた」「……」 リーネは私の後ろに回って、髪を梳かし始めた。 手つきは丁寧だった。 でも時々、櫛が少し強い。「痛い」「寝癖です」「寝癖に罪はない」「あります」 あるらしい。 鏡の中で、リーネの顔を見る。 従者の顔をしていた。 背筋が伸びていて、目がちゃんとしていて、声も崩れない。 王宮の廊下で見る時のリーネだ。 でも私の髪を結ぶ時だけ、少し雑になる。「リーネ」「はい」「眠い?」「眠くありません」「私は眠い」「何言っているんですか」「朝だから眠いの当たり前じゃん。嘘っぽい」「職務中です」「それ答えになってない」 リーネの手が止まった。「……少しだけです」「やっぱり」「ルカ様のせいです」「なんで」「昨日、石を運び込んだあと、深夜に工房でアイデアスケッチしてたじゃないですか」「あれは仕方ない」「仕方なくありません」 怒られた。 でも、リーネの声は王宮の時と違った。 少しだけ尖っていて、少しだけ年相応だった。 私はそれを見るのが嫌いじゃない。「リーネって、商家の子なんだっけ」「はい」「だから段取りうまいの?」「関係あるかもしれません」 リーネは髪紐を結びながら答えた。「うちは小さな商家でしたけど、人の顔色を見るのは早くなります。誰が急いでいるか、誰が怒っているか、誰が払う気がないか」「払う気がない人もわかるの?」「わかります」「すご」「感心するところですか」「有能」「軽いですね」 リーネはため息をつく。 でも少し嬉しそうだった。 私は鏡を見
最後更新 : 2026-08-09 閱讀更多