地平線の果てに居残った朱色と夜の淡い藍色が混ざり合って夏の夕空を染めた。昼から夜に移り変わりつつある街では、煌々と祭の灯りが輝いている。リコリスはヒースに買ってもらったワンピースに、ヒースもミュゲが生きていたころに特別なときの外出用として着ていた服に着替えると、中央通りに赴いていた。 中央通りには元来の飲食店の多さも手伝って、食べ物の出店が多く並んでいた。掻き入れどきと言わんばかりにこの通りに軒を連ねる店は、祭を訪れた人々から安価な食べ物で小銭をかき集めている。 骨付きの肉。ふかしたじゃがいもにチーズをかけたもの。串焼き肉に片手で持てるサイズのパイ。多彩な具が詰め込まれたクレープ。りんごなどの果物に飴を絡めた菓子。よく冷えたビールにワイン。 「わあ、何あれすごい……!」 リコリスが最初に食いついたのは実演販売の出店だった。何やら飲み物を売っている屋台らしく、青い液体の真上に店主が握り拳を持ってくると色が変わるというもののようだ。 一体どんな仕掛けになっているのかな、とリコリスは露台に置かれたカップを覗き込む。屋台を切り盛りする壮年の男は一礼すると、芝居がかった述べ口上を口にした。 「これはこれは可愛らしいお嬢さん。今からあなたに一夜限りの魔法をお見せしますよ」 男は背後の木桶からよく冷えた青い液体が入った水差しを取り出すと、二つのカップにそれらを注ぎ入れる。そして、男は水差しを桶に戻すと露台の下に隠されていた何かを両手で掴んだ。 「それではお嬢さん。今から右のカップの中身を紫に、左を緑に変えてご覧入れましょう」 男は右の拳に力を込める。すると、何かがぴちょんと液体の中に沈み、紫色が液体の中で解け始める。おお、とリコリスは目をキラキラさせながらそれを見ている。右のカップの液体の色が変わりきると、男は左手の指先をすっと緩めた。すると、今度はカップの中の液体が緑色へと変わっていく。すごーい、とリコリスは手を叩いて喜んだ。店主の男に目配せをされ、ヒースは財布を開く。 「いくらだ?」 「銀貨二枚でございます」 高いな、と思いながらヒースは男に代金を支払う。代金を受け取ってなお、男は何やら物欲しそうな顔をしていたので、仕方なしにヒースは彼の手に追加で銅貨を押し付けた。 またのお越しを、と中の液体が紫のカップを持ったリコリスと緑のカッ
Última actualización : 2026-08-18 Leer más