セレスティナ・ヴェルクレアは、朝から三度も服を替えた。 一着目は、淡い水色の外出着。 鏡の前に立った時は悪くないと思った。清楚で、儚くて、昨日まで泣いていた少女が少し勇気を出して外へ出る、という雰囲気がある。 けれど、袖口の銀糸を見た瞬間、リディアの声が頭の奥で響いた。『あなたの可愛いドレス一着分で、孤児院の雨漏りは直せたそうです』 セレスティナは顔をしかめ、すぐに脱いだ。 二着目は、薄桃色のワンピース。 これはもっと駄目だった。 昨日の夜会のドレスを思い出す。 桃色。 真珠。 銀糸。 孤児院の屋根。 胸の奥がきゅっと縮んで、息苦しくなった。 三着目は、生成り色の地味な外出着だった。 飾りはほとんどない。リボンも小さい。レースも控えめ。 侍女は少し困った顔をした。「セレスティナお嬢様、本当にこちらでよろしいのですか」「変?」「変ではございません。ただ、少し……」「少し?」「お嬢様らしくない、と申しますか」 それを聞いて、セレスティナは鏡の中の自分を見た。 確かに、自分らしくない。 いつものふわりとした華やかさはない。可愛いと言われるための柔らかさも、守ってあげたいと思わせる儚さも薄い。 でも、今日はそれでいい気がした。「これで行くわ」「髪飾りは?」 侍女が差し出したのは、真珠の小さな花飾りだった。 セレスティナはそれを見て、一瞬だけ手を伸ばしかけた。 可愛い。 やっぱり、つけたい。 そう思った直後、またあの言葉が蘇
Last Updated : 2026-08-19 Read more