「なに……またアレをやるんですか?」「あんたにとっても悪い話じゃないだろう。……前回だってとんでもない金額ピンハネしたくせに」「それは当然。俺はこれでも善良な国民なんでね」都内の一等地に本社を構える不動産関連企業、KYOUGOKU REAL ESTATE。黒革のソファにゆったりと座り、にこやかに微笑むのは、社長の京極李仁。「……わかってる。今回も計画は完ぺきだ。あんたは適当な自社ビルを1棟壊す気になってくれたらそれでいい」「ふぅん……まぁ、古ぼけたのは確かに1棟ありますよ?」京極は不敵な笑みを浮かべ、美しく磨かれたガラステーブルに置かれたキャンディボックスに手を伸ばす。「ただし、場所がいいんですよねぇ……」2つ手に取ると、向かいに座る男に勢いよく投げた。……とっさに姿勢を崩してキャッチしたものの、京極の半笑いの表情を見て、呆れた苦笑いを浮かべる。「手数料、前回の10%上乗せしますわ」「ほう……?さすが黒石さんだ。思いきりがいいや!」京極は勢いよく立ち上がり、大きなデスクへと向かう。一面ガラス張りのグラスウォールを背にパソコンに向かう姿を、黒石と呼ばれた男はまぶしく見つめた。「物件のデータは送ったんで、皆で確認してください。見終わったら必ず消去するように」「……うちはパソコンに疎いのばっかりで、できたら紙のほうが助かるんだけどねぇ」「冗談でしょ。簡単に証拠を残すようなことしてどうするんですか」パタンとノートパソコンを閉じ、腕組みをして黒石の前に立つ京極。「取り壊すビルには何人か入居者がいるから、追い出すのに少し日数が必要です。……それと」追い立てられるように、出されたアイスコーヒーを飲む黒石。上目遣いで目の前の美しい男を見あげながら、次に何を言われるのか身構えた。「今後この話は、若頭に担当させてくださいよ。若い人じゃないと、話が通じなくてダルいんで」「そんなこと言うなよ……俺だってまだ50に入ったばっかだぞ?」「黒石組長、見た目はめっちゃイケオジです!」話が終わったので、飲んでいる途中のグラスを笑顔で奪う京極。黒石は豪華なソファに足をぶつけながら、追い立てられるように社長室を出ていった。「来客が帰ったから片付けて。あと柑橘系のアロマとキャンディボックスの補充」来客が帰った後は、空気清浄機をフル稼働させ、アロマを炊くこ
最後更新 : 2026-08-12 閱讀更多