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2.計画と誤算 side.京極

مؤلف: 桜立風
last update تاريخ النشر: 2026-08-12 15:05:11

「……またアレをやるんですか?」

「あんたにとっても悪い話じゃないだろう。……前回だってとんでもない金額ピンハネしたくせに」

「それは当然でしょ」

都内の一等地に本社を構える不動産関連企業、KYOUGOKU REAL ESTATE。

黒革のソファにゆったりと座り、にこやかに微笑むのは、社長の京極李仁。

「……わかってる。今回も計画は完ぺきだ。あんたは適当な自社ビルを1棟壊す気になってくれたらそれでいい」

「ふぅん……まぁ、古ぼけたのは確かに1棟ありますよ?」

京極は不敵な笑みを浮かべ、美しく磨かれたガラステーブルに置かれたキャンディボックスに手を伸ばす。

「ただし、場所がいいんですよねぇ……」

2つ手に取ると、向かいに座る男に勢いよく投げた。……とっさに姿勢を崩してキャッチしたものの、京極の半笑いの表情を見て、呆れた苦笑いを浮かべる。

「手数料、前回の10%上乗せしますわ」

「ほう……?さすが黒石さんだ。思いきりがいいや」

京極は勢いよく立ち上がり、大きなデスクへと向かう。一面ガラス張りのグラスウォールを背にパソコンに向かう姿を、黒石と呼ばれた男はまぶしく見つめた。

「物件のデータは送ったんで、皆で確認してください。見終わったら必ず消去するように」

「……うちはパソコンに疎いのばっかりで、できたら紙のほうが助かるんだけどねぇ」

「冗談でしょ。証拠を残すようなことしてどうするんですか」

パタンとノートパソコンを閉じ、腕組みをして黒石の前に立つ京極。

「取り壊すビルには何人か入居者がいるから、追い出すのに少し日数が必要です。……それと」

追い立てられるように、出されたアイスコーヒーを飲む黒石。上目遣いで目の前の美しい男を見あげながら、次に何を言われるのか身構えた。

「今後この話は、若頭に担当させてください。若い人じゃないと、話が通じなくてダルいんで」

「そんなこと言うなよ……俺だってまだ50に入ったばっかだぞ?」

「黒石組長、見た目はめっちゃイケオジです!」

話が終わったので、飲んでいる途中のグラスを笑顔で奪う京極。

黒石は豪華なソファに足をぶつけながら、追い立てられるように社長室を出ていった。

「来客が帰ったから片付けて。あと柑橘系のアロマとキャンディボックスの補充」

来客が帰った後は、空気清浄機をフル稼働させ、アロマを炊くことにしている。

……ニオイと菌の撃退だ。

言われたもの持って、28歳の女性秘書、山田がシナを作りながら社長室に入ってきた。

紺色のトップスと白いタイトスカート姿の秘書。……派手な身なりではないのに、どうしてこうケバく見えるのか。

「君、俺の秘書になってどのくらい?」

「……1年ほどになります」

「だとしたら、気づかないか?」

話しかけられて嬉しいのか、横髪を耳にかけながら振り向く。……ジャラジャラ音がしそうな大きなピアスが邪魔そうだ。

そうか……アクセサリーがクドくて化粧も濃いからケバく見えるんだ。

「と、言いますと……」

「今日も化粧が濃いね。あとアクセサリーがバカデカい」

「そ……そうでしょうか」

「うん。あと甘ったるい変な匂いがするんだよね」

そこまで言われて、秘書はさすがに青くなる。

「俺が言いたいのは、1年近く秘書をやってて、上司の苦手なものを見極められないことが残念だってこと」

申し訳ありません、と言って秘書が涙目で出ていくのを、京極は半笑いで見送った。

「……ここか」

夕方、取引先との会食の予定を残し、時間が開いた京極は、黒石に話した解体する予定のビルへと足を向けた。

「……サバンナビルディング?」

なんというネーミングセンスだ。……当時の俺、どうかしてた。

ぐるりと外観を見て回り、ビルの中に足を踏み入れた。入っているテナントと、居住者がいる3階より上のスペースをゆっくり周回してみる。

「なんだ……9割空いている」

エレベーターも古く、取り壊すには最適な時期だろう。

「1階にイタリアンレストラン、中華料理屋。2階には、介護関連の、店……?」

唐突に福祉の雰囲気が漂う2階。京極は入っているテナントを確認した。

「……これか。……つまみっ子倶楽部」

なんというネーミングセンス……俺の右に並ぶな。

いわゆるデイサービス的な介護施設と保育園を併設したテナントのようだ。……2階に入っているのはここだけだとわかる。

「3つのテナントとまばらな居住者。立ち退き料を払えば、すぐに追い払えるな」

京極は車に戻り、会食が行われる料亭に向かいながら、秘書に連絡をした。

「A地区のサバンナビルディング、取り壊しの決定と立ち退きをお願いするポスターを作って貼りに行って。居住者もテナントも少ないから、各戸にポスティングもしておくように」

難なく進むと思っていた。

進まなければ金を積むだけ。何の問題もない……はずだった。

「立ち退きはお断りいたしたく、代表して参りました」

その後社長室を訪れた若い女が、まさかこんなに俺を手こずらせるとは思ってもみなかった。

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  • 京極社長は善良すぎる女に飼われたい……2つのダイヤが秘密を暴く   79.ダイヤの行方 side.裕貴

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