これまで奈月が自分に向かって何度も歩み寄ってくれたのだ。なら、最後の一歩くらいは、どれほど困難でも今度は自分が踏み出そう。奈月に、自分の本当の気持ちを伝える。翌日、奈月は病室で目を覚ました。輸血のおかげか、以前ほど頭の重さやふらつきは感じなかった。身支度を整えた後、彼女は少し外を歩こうと扉を開けた。どれほど環境の整った病院であっても、そこかしこに漂う消毒液の匂いだけはどうしても避けられない。彼女はその匂いが心底嫌いだった。だが病室の扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、扉の前で壁にもたれ、座り込むような格好で眠る大知の姿だった。扉の開く音に、浅い眠りから覚めた大知が目を上げる。奈月の姿を捉えた瞬間、その目にわずかな輝きが宿った。「奈月……起きたのか」どうやら大知は昨夜、彼女の病室の前で一晩過ごしたらしい。着ているのは昨日と同じ服で、髪はひどく乱れ、顔には青あざが広がり、無精髭まで伸びていた。誰がどう見ても、この男があの街を代表する真島グループの社長だとは信じがたい有様だった。奈月は素っ気なく言った。「こんなことして意味がないわ」大知は壁に手をつきながら、ようやくの思いで体を起こした。「意味があるかないかは、俺が決める。ただ、今こうしてお前のそばにいられることが、俺にとってはそれだけで十分意味がある」「大知、私はもう死ぬのよ。あなたがそばにいたところで、一体何が変わるっていうの。ただ鬱陶しいだけよ」奈月は彼の脇をすり抜けて、外へと向かった。大知は一定の距離を保ちながら、その後をついて歩いた。まるで、彼女の姿さえ見えていれば、それだけで満足だとでもいうように。看護師二人が、奈月の背後についてくる大知を見て、小声で噂話をしていた。「見た?あの人よ。顔立ちは悪くないのに、ちょっと変な人みたい」「何が変なの?どうしてそう思うの」「昨日ね、処置室で、どうしても800mLも献血するって言い張ってたのよ。止めようとしたらすごい剣幕で怒り出して、処置台を壊しかねない勢いだったの」「え、それは私たちも、あまり近づかない方がよさそうね」看護師たちの会話を耳にし、奈月は思わず振り返って大知を見た。道理で顔色があんなに青白く、病人のようにやつれて見えるわけだ。800mLの献血?奈月には、大知がなぜそんな
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