「酒井」凌雅はデスクの内線ボタンを押した。「入ってくれ」「はい、社長」黒いスーツにタイトスカートを合わせた女性がハイヒールを鳴らして入ってくると、雲乃に向かってにこりと笑った。「水城部長、初めまして」雲乃も彼女に軽く頷いた。「初めまして」「彼女を企画部へ案内してくれ。今後、企画部の人間は全員、彼女の指示に従えばいい」「承知しました」酒井雨音(さかい あまね)は頷くと、雲乃を連れて部屋を出た。「水城部長、こちらへどうぞ」「ありがとうございます」雲乃は雨音について企画部へ向かった。最初は多少緊張していた。これから部下たちとどう接していけばいいのか、少し不安だったのだ。ところが企画部へ着いた途端、目に飛び込んできたのは、一列に並んで拍手をしながら彼女を迎える社員たちだった。「水城部長、ようこそ!」「水城部長、すっごく綺麗!もう大好きです!」「うぅ、やっと本物に会えた!これから誰がうちの企画部を馬鹿にできるか見ものだね!」「水城部長、今日仕事が終わったらサインしてもらってもいいですか?」……皆から向けられる憧れに満ちた眼差しを見て、雲乃は思わず隣にいる雨音に顔を向けた。「酒井秘書、これは……」「水城部長がこの業界でどれだけ有名なのか、知らないんですか?」雨音は笑いながら、彼女を専用のオフィスへ案内した。「この部署の人間は、ほとんど全員水城部長のことを知っています。みんな水城部長に憧れているんですよ。仕事があれば、遠慮なく指示を出してください。みんな水城部長を信頼していますから、きちんと指示に従ってくれます。それに社長にもすでに話は通っています。誰かに邪魔される心配もありません。何か必要なことがあれば、いつでも私に電話してください。私の番号はもうお持ちですよね」雨音が去ったあと、雲乃はふと顔を上げ、ドアの外に視線を向けた。すると社員たちが何度もこちらをこっそり覗いているのが見え、思わず笑みがこぼれた。実際、雲乃はこの業界で長年経験を積んできた。研司の会社が請け負ってきた展示会の企画は、ほとんどすべて彼女が企画部全体を率いて完成させてきたものであり、競合を抑えて数多くの案件を獲得したこともある。久世グループも、その競合の一つだった。まさか自分がいつか、研司の対立す
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