私は取り憑かれたように、従姉の投稿を端から読み漁った。5年前までさかのぼると、最初の投稿もやはりウェディングフォトで、こんな言葉が添えられていた。【ずっと好きだった彼が選んでくれたドレスを、やっと着ることができた。1日がかりの撮影だったのに、彼はどこまでも優しくて辛抱強かった】じわりと、目の奥が熱くなった。その前日は、私と拓朗が結婚写真を撮った日だったからだ。写真の中の拓朗は笑っていた。従姉のポーズに自然に合わせ、キスされた瞬間には耳まで赤くしていた。なのに、私と撮ったときの拓朗は、最後まで表情ひとつ変えなかった。1枚1枚をたどるうちに、ふたりの5年間が少しずつ浮かび上がってきた。世界各地を旅しながら撮影を重ね、行く先々にふたりの足跡を残していたようだった。短かった従姉の髪は腰まで伸び、ドレスも簡素なサテンから、手の込んだ刺繍入りのものへと変わっていった。拓朗は根っからの仕事人間で、結婚式の直前まで仕事をしているような人だ。それなのに、二週間に一度は必ず従姉との撮影に付き合っていたのだ。この5年間の記憶が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。数えきれない残業の夜。週末に突然入る「出張」記念日のたびに繰り返された「仕事が忙しくて」という言い訳。そのすべてに、投稿の日付がぴたりと重なっていた。私が仕事で上司に理不尽な扱いを受けていた日、ふたりはアイスランドのオーロラの下、一枚のカシミアの毛布に一緒にくるまっていた。私が流産して、ひとり病院のベッドで痛みに耐えていた日、ふたりはニュージーランドの善き羊飼いの教会の前でキスをしていた。拓朗の時間は、私と従姉に半分ずつ分けられていた。ただ、私に回ってくる半分は、いつもどこか欠けたものだった。心臓を刃物で抉られたように、息もできないほどの痛みが押し寄せた。震える手で拓朗とのトーク画面を開いた。最後のメッセージは今日の午後のものだった。【急な出張が入った。夜は待たなくていい】結婚してから、拓朗は付き合いで朝まで帰らないことが多かった。そのたびに連絡を取ろうとしても、拓朗が電話に出ることはなかった。返事が来るのは翌日になるか、出張に同行している秘書から代わりに連絡が来るかのどちらかだった。いつものように電話をかけてみたけれど、やはり拓朗は出なか
Read more