お手洗いで火傷の応急処置をしていると、30分前に彩夏から届いていたメッセージが目に入った。【薊、LINEグループで言われてること、変に誤解しないでね。みんな面白がって騒いでるだけだから、気にしないで】手を拭き、私は【分かってるよ】とだけ返信した。1分前には、啓哉からもメッセージが届いていた。【さっきのは、周囲の目を気にして避けただけだ。深く考えないでくれ】このメッセージを見つめていると、なぜか胸の奥がじわりと重くなる。入社して3年、社員旅行でも飲み会でも会議の席でも、数えきれないほどの場面で、啓哉の隣に座るのは、いつも各部署の部長や、彩夏や、他の社員たちだった。私だったことは、一度もない。たとえ私が彼と並んで立つ機会があったとしても、彼は周囲に疑われないようにと誰かと場所を代わり、私の視線に気付かないふりをし、私の言葉を聞き流すのだ。会社の人たちも彼のそのよそよそしい態度に気づき、私を軽んじて、すっかり蚊帳の外に置くようになっていた。私はスマホの画面を消し、返信はしなかった。席に戻ると、皆はまだ賑やかに食事を楽しみ、談笑していて、まるで何事もなかったかのようだ。ただ、手の火傷の水ぶくれがズキズキと痛むたびに、「もう別れよう」という決意が確かなものになっていく。飲み会がお開きになると、車を運転するからとウーロン茶を飲んでいた啓哉のそばへ、同僚たちが彩夏を押しやった。「社長、今日は台風でタクシーが全然つかまりません。早島さんが一人で帰るのも危ないですし、申し訳ありませんが、彼女を家まで送っていただけないでしょうか?」啓哉は断ることなく頷いた。「ああ。浜区の方向だけど、他にも同じ方面の人はいるか?」彼は何気ない様子で口にしたが、その視線はまっすぐ私に向けられていた。私は喉の奥がキュッと締まるのを感じた。3年前、仕事帰りに見知らぬ男に後をつけられて以来、一人で夜道を歩くことにトラウマを抱えている。それを知った啓哉は、それから毎日、私を密かに家まで送ってくれるようになった。思わず口を開く。「私も……」「他の皆は僕が送りますから」ある男性社員が私の言葉を遮り、目の前に割り込んでくる。「社長は、早島さんのことをよろしくお願いします」啓哉は少しの間、私を見つめたままだったが、やがて視
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