木曜の夕方。グランドロイヤルホテルで最も大きな宴会場。シャンデリアの光がきらめき、落ち着いたクラシック音楽が流れている。シャンパンタワーには、金色の光が揺れていた。颯斗は時間どおりに姿を見せた。目の下の疲労は隠せないが、髪を整え、高価な仕立て服に身を包んでいる。その後ろから、念入りに着飾った結花が入ってきた。今日の彼女は、その装いに相当な金をつぎ込んでいた。身につけているのは、私が半年以上かけてデザインに関わり、のちに未練なくキャンセルした特注のウェディングドレスだった。裾にあしらわれた細かなストーンが照明を受けて輝く。結花は颯斗の腕に手を絡ませ、顎を少し上げた。「颯斗、こんなに豪華に飾ってある。涼音さんは、やっぱりあなたを諦められなかったんだね」彼女は声の端々に隠しきれない優越感を滲ませて、小声で囁いた。「あとでこのドレスで入場すれば、事務所の人たちもみんな、私が一番大切にされているってわかるよ」颯斗は眉を寄せたが、答えなかった。事務所の業務停止で数日間ほとんど眠れていない。それでもここへ来たのは、わずかな期待が残っていたからだ。涼音がこれほど大がかりな席を用意したのは、7年の情をまだ断ち切れず、このやり方で俺に心を入れ替えさせ、彼女のもとへ戻るための口実を与えようとしているからだと思っていた。今日、涼音の機嫌を直せば、事務所の危機も、クライアントの解約も、まだ取り戻せるかもしれない。だが、優雅に振る舞いながら会場へ足を踏み入れた瞬間、颯斗の顔色が変わった。何かがおかしい。白いクロスのかかった円卓を見渡すと、冷や汗が一気に噴き出した。本来なら別室の隅にいるはずの私の両親が、中央のメインテーブルに座っている。そればかりか、メインテーブルに座っているのは、私の恩師であり、法曹界の重鎮でもある近藤正造(こんどう しょうぞう)先生、橘総合法律事務所のシニア・パートナーである宗人、そして……つい先日、颯斗へ契約解消を通知したあの主要クライアント4社の代表たちだった。颯斗の事務所のスタッフは一人もいない。颯斗のろくでもない友人の姿もない。結花が呼んだ「親友グループ」の姿もなかった。会場にいるのは、私が業界で築いてきたトップクラスの人脈と、私の家族だけだった。司会者が準備していた「幼
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