離婚してから半年、遼介は何度もやり直したいと言ってきた。けれど、私は一度も応じなかった。花は届くたびに送り返し、食事に誘われても、美月のことで話があるとき以外は会わなかった。ある日、遼介は雨に濡れながら、私の勤め先のビルの前で2時間も待っていた。仕事を終えて外に出た私は、遼介を見つけて足を止めた。「どうして中で待たなかったの?」「仕事の邪魔したくなかったから」遼介は持っていた傘を私に差し出した。「今夜は雨だって言ってたから。傘、持ってないかと思って」私は持っていた傘を見せた。「持ってるよ」遼介はそれを見たまま、しばらく黙っていた。前は、出かける前に天気を確認するのはいつも私だった。寒い日は上着を持つように言い、雨の日は傘を忘れないように声をかけていた。でも遼介が、私にも同じように気を配ってくれることはほとんどなかった。今になって、遼介はようやく私のことにも気を配るようになった。でも私はもう、遼介に気にかけてもらわなくても平気だった。「もう帰って」そう言って背を向けると、遼介がふいに聞いた。「俺たち、もうやり直せないのか?」私は足を止めた。この半年で、遼介はずいぶん痩せていた。後悔していることも、今度は一時の気持ちじゃないことも、私にはわかっていた。それでも、気持ちは変わらなかった。「もうやり直すつもりはないよ」遼介の目が赤くなった。「どうして?」「もう、あなたのことは許してるから」遼介は言葉を失った。「あなたを許してから、やり直したいって気持ちもなくなったの」以前の私は、遼介が変わって、いつか本当に私を愛してくれたら、それまで我慢してきたことも無駄じゃなかったと思える気がしていた。でも、あとになってわかった。どれだけ我慢したって、それで今までのつらさが報われるわけじゃない。私はただ、傷ついていただけだった。だから、遼介にこの先ずっと埋め合わせてもらおうとは思わなかった。それに、遼介を愛した自分は間違っていなかったと思いたいからといって、もう一度やり直そうとも思わなかった。
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