そのとき突然寝殿の扉が開き、若吟が甘えるような足取りで入ってきた。「陛下、しばらく私のところへ来てくださいませんでしたわね」その言葉が終わるより早く、行舟の手が若吟の首を掴み上げた。「朕が、貴様を殺せぬとでも思っているのか」強い息苦しさが襲いかかり、若吟の顔はたちまち蒼白になった。「陛下、痛いです!」行舟はその声など耳にも入らぬかのように、手にこもる力をますます強めていった。みしり、と嫌な音がした。首を締めつけられた若吟は激しい痛みに顔を歪め、反射的に行舟の手に噛みついた。行舟は眉をひそめると、若吟の頭を寝台の柱へと叩きつけた。一度……二度……若吟の額から血が滴り落ち、その光景はぞっとするほど凄惨だった。行舟の瞳は真っ赤に充血し、まるで正気を失った野獣のようだった。意識を失う寸前、若吟は簪を引き抜くや、行舟の心臓めがけて力任せに突き立てた。「者ども、陛下をお守りせよ!」一群の侍衛が剣を手に駆け込み、若吟をその場に押さえつけた。行舟は胸元を押さえながら、荒く息をついて言った。「柳若吟、朕の暗殺を謀ったな。即刻斬首に処す」「陛下、柳家はこれまで陛下を支えてきた家ではありませんか!私を殺せば……」「貴様だけでなく、柳家一門を根絶やしにする!」若吟の体は激しく震え出した。「あ、あなた……何を仰るの!?」若吟は信じられないという面持ちで行舟を見つめた。その瞳には恐怖と絶望が満ちていた。「陛下、そこまで無情になれるはずがないです!柳家はこれまで朝廷のために多大な功を立ててまいりました。それを陛下お一人の私情のために、一門もろとも誅殺なさるなど、そんな……!」若吟は声を張り上げ、行舟のわずかな憐憫すらも呼び起こそうと必死だった。「朕の私情だと申すか。貴様たち柳家が犯してきた罪は数え切れぬほどだ。だが、柳家一門を裁くにはまだ確たる証拠が要る。まずは貴様の命をもらう」数日後、若吟は市中を引き回された。囚車に乗せられ髪を振り乱した若吟の姿はやつれ果てていた。それでもその瞳にはなおも悔しさと恨みの色が宿っていた。沿道は民でひしめき合い、指を差す者、憤りをぶつけて罵る者があとを絶たなかった。かつてあれほど高い地位にいた柳家の令嬢が、今や囚われの身に落ちぶれている。その落差の大きさ
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