第11話 同接十二人の朝 朝になっても、十二という数字は消えていなかった。 喫茶こもれびのカウンターに置いたノートパソコンの画面に、昨夜の配信アーカイブが残っている。 番組名は、まだ少し照れくさい。『夜の商店街、まだ明かりついてます』 最大同時接続数、十二人。 総再生数、三十四。 コメント、二十七件。 どれも、昔の俺なら気にも留めなかった数字だ。 いや、気にも留めなかったどころか、見た瞬間に胃が沈んでいたと思う。 登録者八十万人の頃、同接が少し落ちただけで、俺は配信後に何度もアナリティクスを見直していた。 何分で離脱されたか。 どの話題でコメントが減ったか。 どのゲームなら数字が取れるか。 次は誰とコラボすれば伸びるか。 そんなことばかり考えていた。 十二人。 昔の俺なら、敗北の数字だった。 でも昨夜、こはるは言った。「十二人も、いました」 その声が、まだ耳に残っている。 細くて、掠れていて、泣いた後の、でもどこか嬉しそうな声。 俺は、パソコン画面を見つめながら、冷めかけたコーヒーを飲んだ。「まずい」 自分で言ってしまった。 悔しいが、まずい。 源三さんに毎日言われているせいで、味覚まで洗脳されてきたのかもしれない。 ソファの方を見る。 白瀬こはるは、毛布にくるまって眠っていた。 昨夜の配信後、彼女は卵焼きを一切れ食べ、白湯を飲み、それから力尽きるように眠った。 スマホはタオルに包まれたまま、テーブルの端に置いてある。 途中で何度か震えた。 俺のスマホも、何度も震えた
Last Updated : 2026-08-29 Read more