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忘却の代わりに、愛を捨てる のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 22

22 チャプター

第21話

愛夏が2階に上がると、アダムがのんびりとコーヒーを片手に興味津々な様子で聞き耳を立てていた。彼女はすぐさま蹴りを一発お見舞いした。「こんなところで盗み聞きしてたの?」アダムは慌てて両手を上げた。「隠れてないんだから、盗み聞きじゃないだろ」「聞いて、何か感想は?」愛夏は彼をじろりと見た。アダムは真剣に考えたあと、言葉を選びながら答えた。「あいつってさ、本当にとんでもない変態だな。誰かを好きになるのに、相手を痛めつけて喜んでる奴、初めて見たよ」思わずぷっと噴き出した愛夏は、笑いが止まらなくなった。アダムの「変態」という一言が、大翔にこれ以上ないほど的確な表現だと思ったのだ。まさに彼そのものだった。彼女が笑うのを見て、アダムは少し表情を引き締め、真面目に尋ねた。「それでこれからどうするつもりなんだ?もし彼が、まだ諦めないつもりだったら?」愛夏は首を振り、はっきりとした口調で言った。「アダム、私にはね、一つ長所があるの。一度決めたことは、最後まで貫くところ。彼を愛してたときは、何もかも投げ打つくらい、全身全霊で愛した。だから今もう愛してないなら、どんなことがあっても二度と愛し直したりしない」愛夏は寝室のドアを開けた。廊下の先に、小さな人影があるのに気づく。大翔が後をついてきたのだろうと、彼女には見当がついた。もしかしたら今しがた彼女が話したことも、全部聞かれていたかもしれない。それでも、彼女は振り返らなかった。ただドアをしっかりと閉め、彼に関するすべてをその扉の外へと締め出した。大翔はその場に立ち尽くしたまま、今にも崩れ落ちそうだった。アダムがすれ違いざま、素っ気なく声をかけた。「藤山さん、いつ帰るつもりです?」大翔は何も答えず、ただ全身をこわばらせながら冷たい壁にもたれかかり、放心したような表情を浮かべていた。そのまま丸3時間、彼はそこに立ち続けた。その間、愛夏は一度も部屋から出てこなかった。まるで、わざと彼を避けているかのように。大翔には分かっていた。この先も、彼女はきっと今日のようにずっと自分を避け続けるだろうと。大翔の口元に、自嘲するような笑みが浮かんだ。壁に手をついてそのまま立ち去ろうとしたその瞬間、ガソリンのような刺激臭が鼻をついた。続いて、何かが焦げるような嫌な
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第22話

目の前に広がる火の海を見つめた瞬間、大翔は全身を焼かれるような恐怖に襲われ、その場に崩れ落ちた。「愛夏……」大翔は真っ青な顔で、声を震わせながら言った。「頼む、無事でいてくれ……何も起きないでくれ……」彼はまるで正気を失ったかのように、火の海へと駆け出した。アダムが彼を制止した。「気は確かか?今入ったら死ぬぞ!」けれど大翔は構わずアダムを振り払い、そのまま炎の中へと飛び込んでいった。「彼女が死んだら、俺が生きてる意味なんてない」熱気と炎が、大翔の服や肌を容赦なく焼いた。目を見開き、必死に炎の中をかき分けるように進んでいった。自分でも、どれだけの時間探し続けたのか分からなかった。ようやく部屋の隅で、全身をずぶ濡れにした愛夏を見つけた。彼はよろめきながら愛夏を抱き上げ、必死にドアの外へと駆け出した。愛夏は彼の袖をつかみ、耳元にひとこと、息も絶え絶えにつぶやいた。「大翔……今度は……ようやく、私を助けてくれたの……?」大翔の体が一瞬こわばった。そうしてついに火の海を抜け出すと、愛夏をアダムの腕の中に預けた。そのまま、彼自身の体は糸が切れたように倒れ込んだ。大翔は、悪夢を見た。夢の中、車が愛夏に向かって激しく突っ込んできたその瞬間。本来なら彼女を助けに行くべきだったのに、彼は身を翻し、歌織を抱えたまま立ち去り、彼女をたった一人その場に置き去りにした。彼女の体は傷だらけで、血だらけでピクリとも動かなかった。大翔は振り返りたかった。けれどどれだけ自分の体を動かそうとしても、どうすることもできなかった。かつての自分は、愛夏を嫉妬させるためだけに彼女の安全すら顧みなかった。なんて身勝手な人間だったのだろう。本当に、愛夏の言った通りだった。自分のエゴを満たすためだけに、彼はあれほど残酷に彼女を傷つけ続けてきたのだ……大翔ははっと目を覚まし、勢いよく体を起こした。消毒液の匂いが充満する病室に自分が横たわっていることに気づく。点滴の針を引き抜き、ベッドから降りようとした。傍らにいたアシスタントが驚いたように目を覚ました。「社長、目が覚めたんですか!?どこか具合が悪いんですか?すぐに医者を呼びますね」大翔は全身を震わせながら尋ねた。「……愛夏は?」怖かった。彼はひどく怖か
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