悠人は明らかに動揺していた。慌てた拍子にそばのシャンパンタワーへ腕が当たり、タワーは派手な音を立てて崩れた。シャンパンが床一面に広がった。面白がって見ていた人たちも、突然の騒ぎにしらけたようで、一斉に私を見た。悠人は一瞬うろたえたものの、すぐに何事もなかったような顔に戻り、他人行儀な口調で私を紹介した。「こちらは、幼なじみの遼介の妹さんで、柚希さんです」悠人が私との関係を隠したがっていることは、嫌というほど伝わってきた。胸の奥が、ずきりと痛んだ。悠人にとって、私はそんなに人に知られたくない相手だったのだろうか。5年も付き合ってきたのに、悠人の口にかかれば、私はただの「幼なじみの妹」でしかなかった。思わず苦笑した。それならと、私も話を合わせた。「悠人さん、お久しぶりです」遼介もすぐに話を合わせてくれたので、周りもようやく納得したようだった。悠人は、私の顔が青ざめていたことにも気づかず、安心したように息をついた。そしてステージの上で、隣にいた女性と再び肩を寄せ合った。その姿を見た周囲から、また歓声が上がった。私は、その女性を知っていた。水原美咲(みずはら みさき)。悠人が以前付き合っていた女性だった。鼻の奥がつんとして、涙がこぼれそうになった。美咲とはもう関わらないと、悠人は確かに約束したはずだった。それなのに、よりによって私の誕生日に、私に隠れて美咲にプロポーズしていた。結局、私は美咲には勝てなかったんだ……そのとき、美咲と目が合った。美咲は私を見て、楽しそうに目を細めた。「柚希ちゃん、今日はずいぶんおしゃれしてきたのね。メイクもきれいだし、このパーティーを楽しみにしてたのが伝わってくるわ。今まで私の代わりに悠人を支えてくれて、ありがとう。せっかくだし、乾杯しない?」そう言って、美咲はシャンパンの入ったグラスを私に差し出した。その言葉に、周りがざわついた。「すごい気合い入ってない?主役より目立ちたいのかな」「ほんと。何も知らなかったら、あの子がプロポーズされる側だと思うよね」悠人は、私がお酒を飲めないと知っていた。それなのに、ひと言も口を挟まず、黙って見ているだけだった。そんな悠人を見て、もう十分だと思った。5年間続いた関係も、これで終わりにしよう。私は美咲が差
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