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私の誕生日に、恋人は別の女へプロポーズした
私の誕生日に、恋人は別の女へプロポーズした
Autor: キュートキャット

第1話

Autor: キュートキャット
悠人は明らかに動揺していた。慌てた拍子にそばのシャンパンタワーへ腕が当たり、タワーは派手な音を立てて崩れた。シャンパンが床一面に広がった。

面白がって見ていた人たちも、突然の騒ぎにしらけたようで、一斉に私を見た。

悠人は一瞬うろたえたものの、すぐに何事もなかったような顔に戻り、他人行儀な口調で私を紹介した。

「こちらは、幼なじみの遼介の妹さんで、柚希さんです」

悠人が私との関係を隠したがっていることは、嫌というほど伝わってきた。胸の奥が、ずきりと痛んだ。

悠人にとって、私はそんなに人に知られたくない相手だったのだろうか。

5年も付き合ってきたのに、悠人の口にかかれば、私はただの「幼なじみの妹」でしかなかった。

思わず苦笑した。それならと、私も話を合わせた。

「悠人さん、お久しぶりです」

遼介もすぐに話を合わせてくれたので、周りもようやく納得したようだった。

悠人は、私の顔が青ざめていたことにも気づかず、安心したように息をついた。そしてステージの上で、隣にいた女性と再び肩を寄せ合った。その姿を見た周囲から、また歓声が上がった。

私は、その女性を知っていた。

水原美咲(みずはら みさき)。悠人が以前付き合っていた女性だった。

鼻の奥がつんとして、涙がこぼれそうになった。

美咲とはもう関わらないと、悠人は確かに約束したはずだった。

それなのに、よりによって私の誕生日に、私に隠れて美咲にプロポーズしていた。

結局、私は美咲には勝てなかったんだ……

そのとき、美咲と目が合った。美咲は私を見て、楽しそうに目を細めた。

「柚希ちゃん、今日はずいぶんおしゃれしてきたのね。メイクもきれいだし、このパーティーを楽しみにしてたのが伝わってくるわ。

今まで私の代わりに悠人を支えてくれて、ありがとう。せっかくだし、乾杯しない?」

そう言って、美咲はシャンパンの入ったグラスを私に差し出した。

その言葉に、周りがざわついた。

「すごい気合い入ってない?主役より目立ちたいのかな」

「ほんと。何も知らなかったら、あの子がプロポーズされる側だと思うよね」

悠人は、私がお酒を飲めないと知っていた。それなのに、ひと言も口を挟まず、黙って見ているだけだった。

そんな悠人を見て、もう十分だと思った。

5年間続いた関係も、これで終わりにしよう。

私は美咲が差し出したグラスを受け取ると、ためらわずに飲み干した。

美咲は満足そうに笑った。

悠人は何か言いかけたが、結局何も言わなかった。

そのあとの食事では、私はうつむいたまま、ひたすら料理を口に運んだ。

悠人と美咲が抱き合っていても、指を絡めて手をつないでいても、何でもないように笑ってみせた。

遼介は私の様子がおかしいことに気づき、そっと声をかけてきた。

「どうしたんだ?家を出る前は、あんなに楽しそうだったのに」

私はそっけなく答えた。

「別に。さっき、彼氏と別れただけ」

遼介はそれ以上聞いてこなかった。ただ黙って、私の好きな料理を取り皿に取り分けてくれた。

どれも大好物のはずなのに、何を食べても味がしなかった。

私はずっと、23歳の誕生日を心待ちにしていた。その日になれば、悠人がプロポーズして、みんなの前で私を恋人だと紹介してくれると信じていた。

今朝、家を出る前に、悠人がテーブルの上の婚約指輪を持っていくのを見た。そのあと遼介から、悠人がプロポーズするらしいと聞き、てっきり私に内緒でプロポーズの準備をしてくれていたのだと思い込んだ。嬉しくて仕方がなかった。

けれど、悠人がその指輪を贈った相手は、私ではなく美咲だった。

とんだ勘違いだった。

勝手に期待して、舞い上がっていたのは私だけ。

2人が一緒になりたいのなら、もう邪魔はしない。

こんな嘘だらけの恋なんて、もういらない。

食事の途中、急に下腹部が痛みだしたので、私は先に席を立って家へ帰ることにした。

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