父は青ざめたまま、その場に立ち尽くしていた。大きな体を縮こまらせるように肩を落とした姿は、ついさっきまでとは別人のように老け込んで見える。何度も何か言おうと口を開くのに、結局、言葉にはならなかった。私はもう、2人の顔を見ていたくなかった。床に散らばったネックレスの欠片を拾い集め、その場を離れようとしたところで、ふと足を止める。「蓮」振り返らないまま、名前を呼んだ。「婚約指輪なら、緋奈の誕生日パーティーで返したよ。覚えてる?」背後で、蓮が息を呑んだ。「……あれ」かすかに震える声が返ってくる。「あのときの……あれ、美月だったのか?」私は小さくうなずいた。「そう。私だった」少しの沈黙を置いて、静かに続ける。「だから、これで私たちはもう終わり。何の関係もない」視界の端で、両親がこちらへ歩み寄ろうとするのが見えた。けれど私は、その手を取ることなく怜司の腕を取った。もう、遅すぎたのだ。あの誕生日パーティーの日、ほんの少しでも私のことを見てくれていたら。あの場にいたのが私だと、誰かひとりでも気づいてくれていたら――もしかすると、ここまで迷いなく手放すことはできなかったかもしれない。けれど、今となってはどうでもよかった。死にかけて、ようやく分かったのだ。私はもう、あの人たちの愛を求めなくていい。その後も、蓮は何度となく私のもとを訪ねてきた。ある日など、私の前で膝をつき、何度も自分の頬を打った。「やめて」静かに止めると、蓮の手が止まる。「そんなことしても、私は許さないよ」その目から、また涙がこぼれた。自分が何を壊したのか、今になってようやく分かったのだろう。私は確かに蓮を愛していた。だからこそ、これまでのことを簡単になかったことにはできない。蓮は泣きそうな顔のまま、どうにか笑おうとした。「ごめん。俺は緋奈を、妹と重ねてたんだ」蓮は俯き、しばらくしてから言葉を継いだ。「俺を助けて死んだ妹のことが、ずっと忘れられなかった。あの子への罪悪感も消えなくて……緋奈に優しくしてやれば、少しは楽になれる気がしてたんだ」そこで一度、言葉が途切れる。「でも、緋奈は妹じゃない。それなのに俺は、罪悪感から逃げたくて、勝手にあの子を重ねてた」やがて顔を上げた蓮は、まっすぐ私
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