私は、その場に立ち尽くしていた。悲しみと絶望が押し寄せ、今にも呑み込まれてしまいそうだった。折れた脚からは、今も血がにじんでいる。それでも、傷の痛みさえ霞むほど、息が詰まりそうだった。行方不明のはずの緋奈は、ダイヤモンドを散りばめたオートクチュールのドレスに身を包み、大勢に囲まれたその中心で、晴れやかな笑みを浮かべていた。祖母が亡くなる前、私に手渡してくれたエメラルドのネックレスまで、今は緋奈の首元にある。その深い緑が、彼女の気品をいっそう引き立てていた。父は、緋奈を見つめて目を細めている。その眼差しには、隠しようのない慈しみがあふれていた。母は緋奈の頬をそっと包み、親指で愛おしむように撫でた。見つめる目はどこまでも柔らかく、口元には優しい笑みが宿っている。そして、私の婚約者の蓮は、緋奈の腰を抱いていた。蓮が耳元で何かを囁くと、緋奈の耳がほんのり赤く染まる。蓮はそのまま身をかがめてドレスの裾を整え、やがてマイクを手に取った。「俺から緋奈へのプレゼントは、島だ。『念緋』と名づけた。大切な緋奈が無事に帰ってきてくれた、その記念にな」あまりに甘やかな口ぶりに、胸がきつく締めつけられた。緋奈は恥ずかしそうに蓮の胸元へ身を寄せ、会場からはどっと囃し立てる声が上がる。すぐそばで交わされる招待客たちの声が、嫌でも耳に入ってくる。「緋奈さん、クスタニアで行方不明になったって聞いたけど、3日目にはもう桐生さんが専用機を飛ばして迎えに行ったんですって」「藤宮夫妻も、この3か月はずっと緋奈さんにつきっきりだったそうよ。会社の株主総会にまで出なかったとか」「蓮さんだって、あの仕事人間が数百億円規模の買収案件まで延期したのよ。毎日あれこれ考えて緋奈さんを元気づけてたっていうんだから、よほど大事なのね」招待客たちの何気ない会話から、私の知らなかった3か月が容赦なく明らかになっていく。つまり、私が被災地へ戻って緋奈を捜し始めた頃には、緋奈はもう家にいたのだ。それなのに、誰からも知らせはなかった。私を捜しに来る人も、ひとりとしていなかった。強盗や暴動があちこちで起きていると知りながら、誰も何も告げず、私はたったひとり、3か月ものあいだ緋奈を捜し続けていた。死の淵を何度もくぐり抜け、どうにか生き延びてきた。全身の傷が熱を
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