All Chapters of 私が去った後、社長は後悔で狂いそうだった: Chapter 11 - Chapter 14

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第11話

私は思わず笑ってしまい、首を振った。新しい環境で働き始めてから、心も体も日に日に軽くなっていくのを感じた。誰かに足を引っ張られることも、意地悪をされることもない。それだけで、こんなにも爽快なものかと思い知らされる。努力すれば、それに見合った成果がきちんと返ってくる。1ヶ月後、私は幹部クラスにまで昇進した。国内で10年働き、5回も昇進申請を出しながら、一度も手にできなかった地位だった。一方の英輔は、頻繁にニュースのトップを飾るようになった。もちろん、いつも綾夏とセットで。夫婦としてさまざまな社交の場に出席しては仲睦まじさをアピールし、誰もが「お似合いの理想の夫婦だ」と口を揃えて称賛していた。おそらく英輔も、自分が本当に想っていた相手が綾夏だったのだと気づいたのだろう。それはそれで、良かったのだと思う。今の私は、ふたりが仲睦まじくしている姿を見ても、まるで他人事のように、心は波ひとつ立たなくなっていた。あっという間に、3年の月日が過ぎた。帰国して赴任成果を報告する時期がやってきた。思いもよらないことに、空港の到着ゲートで私を待っていたのは、なんと英輔と綾夏だった。英輔はサングラスをかけ、いかにも傲慢な様子で、私の姿を見るなりすぐに背を向けて歩き出した。一方の綾夏は、相変わらず穏やかな仮面をかぶったまま、棘のある口調で言う。「嘉音さん、あなたこの3年、国内より海外の方がよっぽど水が合ってたみたいね。少しふっくらした?もう帰国したくないんじゃない?」本社からの迎えという名目で来てくれた以上、無下に断るわけにもいかず、私はそのままふたりについていった。冬服のおかげでまだほとんど目立たない、妊娠3ヶ月のお腹をそっと撫でる。太ったわけではない。妊娠しているのだ。心の中でそう返しながら、口では適当に受け流す。「ええ、まあ。順調にやってるわ」地下駐車場に着くと、英輔は真っ先に運転席に乗り込んだ。綾夏は迷わず助手席のドアを開けて座り込む。シートベルトを締めながら、ふいに気づいたように言った。「あら、ごめんなさい。忘れてたわ、嘉音さんこそ助手席に座るべきよね。今すぐ降りるから」英輔がふんと鼻を鳴らす。「そんなわがままに付き合う必要はない。後ろに座らせておけばいいだろ」私は少し訳
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第12話

続けて、くまのキャラクターがハートを飛ばすスタンプが送られてきた。私も自然と頬が緩み、ハートのスタンプを返す。気分を良くした私は、ふと英輔に向かって軽い口調で言った。「社長就任、おめでとうございます」けれど次の瞬間、英輔が急ブレーキを踏み、私は勢いよく前へつんのめった。とっさに前の座席に手をつき、なんとか身体を支えた。すぐさま片手でお腹を庇った。赤ちゃんのことが心配で、文句を言う余裕すらなかった。英輔はといえば、鋭い目で私を睨みつけ、あからさまな怒りを向けてきた。綾夏は私と英輔の顔を交互に見比べ、やがて口を開いた。「嘉音さん、そんなに気を遣わないで。まさか、私と英輔が仲良くしているのをまだ気にしてるの?英輔なんて、この数年ずっとあなたのことを気にかけて、海外出張を増やしてまで、あなたに会いに行こうとしてたのよ」英輔がそれを遮り、今度は私に向かって恨みがましい声をぶつける。「綾夏、そんなことわざわざ説明してやる必要ないだろ。薄情なくせに、昔のことをいつまでも根に持ってヤキモチを焼いてるんだ。本当に心が狭いよな」は?誰が、ヤキモチを焼いているって?この私が?突然の言いがかりに呆気にとられていると、綾夏が畳みかけるように笑顔で尋ねてきた。「それにしても嘉音さん、どんどん綺麗になってるじゃない。この3年、海外でもさぞかしモテたんでしょうね?」私は適当に言葉を濁す。「まあまあかな。私、もう結婚してるし」プァーンッ!英輔が力任せにクラクションを鳴らし、長く鋭い音が車内に響き渡った。英輔が振り返る。目を真っ赤にして、掠れた声で私に問い詰めた。「お前、今……何て言った?」私は彼を真っ直ぐに見据え、淡々と答える。「海外で、もう結婚したの」綾夏の目がぱっと輝き、口角が抑えきれないように吊り上がった。「嘉音さん、あなたがどれだけ英輔のことを愛していたか、みんな知ってるのよ。結婚なんて人生の一大事なんだから、そんな冗談言うもんじゃないわよ!」けれど英輔は、何やら考え込むような表情を浮かべた後、なぜか唇の端を上げて笑い出した。「驚いたな。3年海外にいる間に、随分と嘘までつけるようになったじゃないか。まあいい、今回帰ってきたらもう離れるなよ。俺がお前にした約束、これから全部叶えてやれるん
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第13話

まるで、生前の母が優しく私の頭を撫でてくれているかのようだった。ふいに背後から、足音が近づいてきた。振り返ると、英輔が息を切らして立っていた。私を見つけると、安堵したように足取りを緩めた。彼は口元を上げ、どこか誇らしげな様子で言った。「やっぱりここにいると思ってたよ」見れば、彼は慣れた手つきでポケットからハンカチを取り出し、母の墓石を丁寧に拭き始めた。私は少し呆気に取られた。「この数年、ずっと母のお墓を手入れしてくれていたの?」英輔は目を伏せた。長い睫毛が影を落とし、その表情はよく見えない。彼はただ、低い声で言った。「お前のお母さんのことは、地元の人から聞いた。すまなかった。お前が一人で辛い思いをしたことも分かってる。俺から逃げたいと思って海外赴任を選んだのも、当然のことだったんだろうな」彼が勝手に思い込んでいるような、「英輔から逃げるため」という理由で赴任を選んだわけではない。私は素直に訂正した。「お墓のことはありがとう。でも、私が赴任したのはあなたのためじゃないわ。自分のためよ。これまで費やしてきた時間も、努力も無駄にしたくなかったから」英輔はふいに、私を強く抱きしめた。逃がさないとばかりに両腕へ力を込め、くぐもった声で言う。「なんでまだそんなに強がるんだよ!安心しろ、会社の実権はもう完全に俺が握ってる。綾夏とも、離婚する手はずが整っているんだ。そうなったら、真っ先にお前と婚姻届を出して、みんなにも堂々と公表するから!」英輔の考えていることは、もはや私には理解できなかった。3年間まったく連絡すら取っていなかったのに、どうして「公表しよう」などという突飛な話になるのだろう。どうして、私が今も彼と恋人関係にあると思い込めるのだろう。私はお腹の赤ちゃんを守るため、慌てて彼を力一杯押し返した。しかし英輔は、自分の考えがどれほど一方的なものか、まったく気づいていない。私が口を開く間もなく、強引に私の腕を引っ張って歩き出した。「さあ行くぞ、嘉音。お前のために祝賀会を用意しておいたから、今すぐ一緒に会社へ戻るぞ!」道中、英輔はずっと一人でしゃべり続け、私が口を挟む隙など一切与えなかった。会社に戻ると、いつの間にかロビーには華やかなリボンやメッセージボードが飾られ、私の帰任を祝う準備が整えら
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第14話

現在、まさにその副社長のポストに就いている綾夏の口元が、不快そうにぴくりと引きつった。緊迫した空気が流れていたそのとき、穏やかで品のある男性の声がロビーに響いた。「ここが、嘉音の働いている職場か」その声を聞いた瞬間、私は弾かれたように入り口へ駆け寄った。涼太の声だ!私は足早に歩み寄りながら、驚きと喜びの入り混じった声を上げた。「あなた!こんなに早く来てくれたの?」小走りに近づく私を見て、心配そうな顔をした涼太が、私を支えるように腕を伸ばしながら言った。「嘉音、ゆっくり。赤ちゃんに何かあったら大変だろ」その言葉が響いた瞬間、英輔は雷に打たれたように呆然と立ち尽くした。フロアにいた全員が、水を打ったように静まり返る。やがて、機転の利く社員がすぐに愛想笑いを浮かべ、囃し立て始めた。「夏田さん、まさかもうご結婚されて、しかも妊娠までされていたなんて。まさに人生の勝ち組ですね、羨ましい限りです!」「本当ですね。旦那様もすごく素敵な方ですね。夏田さん、本当にお似合いです!」涼太は周囲の視線に耳まで真っ赤にしながらも、しっかりと顔を上げ、私の手を強く握り返した。「嘉音を驚かせたくて、少し早めに来たんだ。それに、お義母さんにも早く会いに行きたいと思ってね」英輔はようやく我に返ったが、以前のような傲慢な余裕は完全に消え失せていた。もはや理性を失っているようにさえ見える。彼は一歩前に出ると、涼太が私を支える手を無理やり引き離そうとした。「ふざけるな!嘉音は俺の妻だ!どうせ俺を嫉妬させるために雇った役者なんだろ!」英輔が正気を失って何をしでかすか分からず、私は赤ちゃんを守るために反射的に手を伸ばし、彼を強く押しのけようとした。けれどその手が、勢い余って彼の頬を打ってしまった。パンッ、という乾いた音がロビーに響き渡る。涼太が素早く私を背中にかばい、警戒するように英輔を見据えて険しく眉を寄せた。綾夏はすかさず英輔をかばうように前に出ると、しきりに安否を尋ねる。「英輔、大丈夫?痛くない?」英輔はただ、赤くなった頬を押さえたまま、全身を小刻みに震わせていた。そして、何の前触れもなく、その目からぽろりと涙がこぼれ落ちた。彼はひどく掠れた声で絞り出すように言った。「嘉音、教えてくれよ。全部
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