再び目を開けたとき、斗亜が病室のベッドの脇に座っている。婚約式で着ていたスーツのままだ。シャツはひどく皺が寄り、目が真っ赤に充血している。右手の甲には包帯が巻かれている。私が目を覚ましたのを見ると、張りつめていた肩の力がようやく抜けた。けれど、彼は私を抱きしめなかった。ただ身をかがめて額に手を当て、沈んだ顔で尋ねた。「今になって怖くなったか?」酸素マスクが頬に食い込んで痛い。私は唇をわずかに動かし、小さな声で聞いた。「私のエピペンは?」「警察が持っていって調べてる」「どうして奪ったの?」斗亜は私を見つめた。その瞳に残っていたほんのわずかな恐怖が、少しずつ、私がいちばんよく知っている失望へと変わっていく。「浅香、俺も聞きたい。どうして毎回、試練のたびに自分から病院送りになる?自分がピーナッツアレルギーだって分かってるのに、どうして前もってお菓子の成分表示を確かめなかった?息が苦しくなったあと、俺にエピペンをよこせって言う以外に、何をした?控え室には電話があった。壁には非常ボタンもある。窓の向こうはスタッフのオフィスだ。助けを呼ぶ方法はいくらでもあったのに、どうして床に座って泣くことしかできなかった?」たったそれだけの言葉で、私の涙は一気にあふれた。「危ないときほど、落ち着かなきゃいけない」彼はきつく眉を寄せた。「浅香、怖かったことを責めてるんじゃない。でも、もし俺がそばにいなかったら、それでも床に倒れたまま死ぬのを待つのか?」「私のエピペンを取り上げたのは、斗亜でしょ」私は彼を見つめた。「扉に鍵をかけたのも」斗亜はしばらく黙り、それから私の手を握った。その手のひらは温かいのに、声は何度注意しても聞かない子どもを叱るようだ。「鍵をかけたのは、俺が悪かった。それは認める。でも、あのときはただ10分だけ静かにしててほしかったんだ。少しつらくなるたびに、みんなを呼びつけるなって。浅香、俺だって一度や二度なら助けられる。でも、一生ずっと片時も離れず、守ってるわけにはいかない。こういう試練を用意したのも、いつか俺が間に合わなくなる日が来るのが怖かったからだ。昨日のことに、俺にも責任があったのは確かだ。でも、浅香が俺を責めることしかできないなら、今
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