All Chapters of もう二度と、夜明けは訪れない: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

第11話

翔太郎の耳の中で、世界が音を立てて崩れ落ちた。腕の中の体は、かつては生き生きと温もりに満ちていた。その体が、彼には止めようのない速さで、少しずつ冷たく、軽くなっていった。彼は真桜を抱えたまま病院へ駆け込み、医師や看護師たちに怒鳴るように処置を迫った。いくら金がかかっても構わないと訴え続け、叶うはずのない未来にすがった。ただ、聞きたいひと言のためだけに。「助けてくれ!一番いい薬を使ってくれ!金はいくらでも払うんだ!」彼はまるで追い詰められた獣のように医師の白衣を掴み、血走った目を見開いていた。医師は、崩れ落ちる寸前のこの男を憐れむような目で見つめ、それでも最後には静かに首を振り、死を告げた。「申し訳ありません、有木さん。できる限りのことはしました。奥様は……亡くなられました」「亡くなられました」その一言はひどく軽かったが、万鈞の巨岩のように、翔太郎の理性も、最後に残っていた希望も一瞬にして打ち砕いた。彼は泣きもせず、取り乱しもせず、ただ医師の白衣を掴んでいた手を離した。その目からは光が消え失せていた。まるで抜け殻のような足取りで、一歩、また一歩と救急処置室へ戻っていった。ベッドのそばまで来ると、彼は身をかがめ、彼女を起こさないよう、そっと額に張りついた汗ばんだ髪をかき分けた。彼女の顔には、彼が最後に見たあの、この上なく晴れやかな微笑みがまだ残っていた。まるで、ただ眠っているだけのように。彼は彼女の冷たい手を握り、自分の頬に押し当てた。それからゆっくりと、その場に崩れ落ちるように膝をついた。廊下中に、喉の奥から絞り出すような、獣の哀鳴にも似た嗚咽が響き渡った。……葬儀はごく簡素なものだった。一切を取り仕切ったのは輪花だった。翔太郎はまるで魂の抜けた人形のように、輪花のするがままになっていた。火葬の日、彼は最後まで柩のそばを離れようとしなかった。柩が火葬炉へと納められ、重い扉が閉じられていくのを見た瞬間、この男はついに立っていられなくなり、その場へ崩れ落ちた。輪花に、同情の色は微塵もなかった。すべてが落ち着くのを待ってから、彼女はひとつの箱を翔太郎へ手渡した。「真桜が残したものよ」彼女の声は冷たかった。「それと、手紙も」翔太郎は震える手で箱を開けた。中には、彼が一度も見たことの
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第12話

1年後。翔太郎は、青港市の海辺で一番眺めのいい別荘を買った。都心のあの広々とした一室は売り払い、使用人の大半を辞めさせて、ひとり、声が反響するほど広いその家へ住むようになった。会社は経営のプロに任せ、彼は完全に、あの華やかなビジネスの世界から姿を消した。彼の日々は、日の出を見ることだけを中心に回るようになった。毎日、夜が明ける前に身支度をして、別荘の外の砂浜へ歩いていった。そこは、彼が最後に真桜を抱き上げた場所だった。彼はそこにずっと座っていた。空の端が白み始めてから、最初の光が雲の隙間から差し込み、やがて赤い太陽が完全に海面から顔を出すまで。彼は、かつて真桜の遺灰を飲み込んだその海に向かって、静かに語りかけた。「真桜、今日は風が強いな。寒くないか」「真桜、お前の絵本、出版されたよ。よく売れてる。みんな、絵の中に光があるって言ってた」「真桜、また夢に見たよ。お前はまだ、俺と話してくれないんだな」彼はまるで時間の檻に囚われたように、来る日も来る日も、終わりのない贖罪を繰り返していた。誰もが、翔太郎はおかしくなったと言った。けれど、彼だけは知っていた。自分はおかしくなってなどいない、と。狂ってしまったのなら、いつかは治る可能性もある。けれど彼にとって、これは終わりのない刑罰だった。自分は、無期懲役を言い渡されたようなものなのだと。その日も、彼はいつものように日の出を見終えて別荘へ戻った。書斎の机の上には、何度も読み返され、ページの端がすっかり擦り切れたあの絵本「新生」が置かれていた。彼は表紙に描かれた、朝の光を浴びる少女の後ろ姿を指でなぞった。その目は空っぽで、絶望に満ちていた。彼は、真桜が彼に残した最後の言葉を思い出した。車窓越しに日の出を見つめながら、彼女はこう言った。「翔太郎、ほら。夜が明けたわ」そうだ。夜は、明けたのだ。けれど彼の世界は、永遠に、果てしない夜に沈んだままだった。もう二度と、夜明けは訪れない。(おわり)
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