がんと診断された日は、美咲が養子に迎えた悠斗の誕生日だった。誕生日パーティーが始まる直前、俺は血を吐いた。美咲は悠斗の誕生日に水を差したと俺を責め、病院へ連れていくどころか、地下室に閉じ込めた。美咲は冷たい目で俺を見下ろした。「律、よりによって悠斗の誕生日に血を吐くなんて。今日がどんな日か分かってるの?」湿った床に這いつくばっている。白いシャツの胸元は、吐いた血で濡れている。胃がひきつり、激しい痛みが走った。このままでは死ぬと思い、必死に病院へ連れていってくれと頼んだ。美咲の目に失望の色が一瞬よぎり、声が低くなる。「まだ嘘をつくの?医師にはとっくに確認してあるわ。早期のがんなら、転移することも、血を吐くこともないのよ!亮介への嫌がらせのために、悠斗の誕生日にこんな真似までして。よくそこまで考えつくわね!」深く息を吸い、声を振り絞ってすがった。「俺は美咲の夫だろ!頼む、美咲。病院へ連れていってくれ。もう二度と姿を見せないから」美咲は顔を険しくした。身をかがめて俺の首を締め上げ、冷たく言い放つ。「そうやって私の気を引こうとしても無駄よ。悠斗の誕生日が終わるまで、そこで大人しくしていなさい。そのあとで病院へ連れていく。病気が治れば、今までどおり水野家の婿でいられるわ」そう言って立ち上がり、出ていこうとした。青白い手で美咲の手首をつかんだ。青ざめた顔を上げ、もう一度懇願する。「病院へ連れていってくれ。頼む……」美咲は鼻で笑い、俺の手を乱暴に振りほどいた。そのまま肩を強く蹴りつけ、ためらいもなくドアに鍵をかける。ドアの向こうから、冷え切った声が聞こえた。「誠司、律を見張っていて。私の許可なしに、ここから出さないで」痛みに耐えきれず、俺は何度も悲鳴を上げた。美咲はその声をうるさがり、悠斗と亮介を連れて温泉ホテルへ誕生日を祝いに出かけた。美咲に肩を蹴りつけられ、俺は床へ倒れ込んだ。反射的に体を丸めた直後、喉の奥が熱くなり、また血を吐いた。真っ白なシャツの胸元に、赤い染みがじわじわと広がっていく。力を振り絞り、床に血の跡を残しながら、少しずつドアまで這った。拳で何度もドアを叩いた。「誠司!頼む、ここから出してくれ。痛くてたまらないんだ!」執事・黒田誠司(くろだ せいじ)はドアに耳を当
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