花火が終わると、人々は出口へ押し寄せた。詩乃はあのバラの花束を抱えていた。熱で顔は真っ赤なのに、それでも花を誰かに預けるのが惜しいらしい。時哉は詩乃のショールを整えてやった。「先に救護室で熱を測ろう」詩乃が小声で言った。「でも、夕花はまだ写真を撮ってないよ。お城の前で1枚撮りたいって言ってなかった?」時哉はそこで初めて私を見た。今夜がそもそも誰の記念日だったのか、ようやく思い出したようだった。「撮りたいのか?」私は時哉を見つめた。その手にはまだ詩乃のスマートフォンがあり、画面にはさっき撮った花火との記念写真が表示されていた。3周年記念コースの最後の記念写真。詩乃がずっと待ち望んでいたこの日は、今日始まったものではなかったのだ。私は首を横に振った。「もういい」時哉がわずかに眉をひそめた。「今度はどうした?」詩乃はせきをし、時哉の袖を指でぎゅっとつかんだ。「時哉、夕花は怒ってるんじゃない?私、先に帰ろうか。来るべきじゃなかったよね」そう言いながら、詩乃は私にバラを押しつけようとした。時哉はすぐにその手を押さえた。「熱があるのに、無理をするな」それから私を振り返った。「小暮夕花(こぐれ ゆうか)、そんな不機嫌な顔をするな。詩乃は具合が悪いんだ。今日は詩乃の夢をかなえるのに付き合ってやったと思えばいい」「じゃあ、私の夢は?」口にした自分自身が、その言葉に驚いた。時哉も言葉を止めた。けれど、すぐに小さく笑った。「こういうおとぎ話を一番信じてなかったのは夕花だろ?どうして今日に限って、プリンセスの夢をめぐって詩乃と張り合うんだ?」私は顔をそむけようとした。けれど視線を落とした瞬間、よりによって詩乃のスカートの裾が目に入った。【朝倉様&柳原様】急に喉がひどく詰まったように感じた。私が黙っているのを見て、時哉は手を伸ばし、私をそばへ引き寄せた。「もういい、意地を張るな。詩乃が熱を測り終えたら、さっき言ってたポップコーンバケットを買いに付き合う」私は一瞬、目を見開いた。あのポップコーンバケットは、売店の前でほんの少し長く眺めただけだった。そのとき時哉はうつむいて詩乃のメッセージに返信していたから、まったく気づいていないと思っていた。けれど時哉は、意外
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