All Chapters of 一族からも契約夫からも冷遇されていた“落ちこぼれ魔女”の私、血を捧げるだけの日々にさよなら――逆襲を始めます: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

第11話

年次晩餐会の夜がやってきた。「行くぞ、燐」「はい」この日は、使用人の運転しているリムジンの後方で二人が並んで座っていた。恭司は燕尾服、燐は先日仕立ててもらったばかりの黒のパーティードレス。端から見れば実にお似合いの格好である。……夫婦である二人の間に会話はあまりないのが実情ではあったが。「途中で具合が悪くなったら、すぐに言え。会場のスタッフにも事情は伝えてある」「大丈夫です、迷惑はかけさせません」晩餐会――御堂財閥のこれまでについての総括と報告が為されるこの場は、この国の様々な大企業の重鎮が集う場でもある。いわゆる“上流階級”同士が交流することになる、選ばれた者たちの場。そこで燐を――彼らにとって公然の秘密である“魔女”を妻として披露する。しかもそれが歴史ある“黒鉄家の魔女”ともなれば、その世界を知る者たちにとっては大きなニュースとなること間違いない。「燐」「何?」「……俺の傍にいるんだ」それは、普段の恭司らしくない台詞に思えるものだったが――(思わせぶりなこと言わないでよ……)燐はそれを正面からは受け取らず、逆に従順を装うようにわざとらしく返していた。「……ええ。わかりました」まるで、西洋のおとぎ話に出てくる王城の大広間のような空間だった。広い会場には多くのテーブルと立食用のディナーが並べられていて、会場のあちこちでは着飾った人々が集まりを作ってはグラス片手に会話を楽しんでいる。「やはり御堂財閥ともなれば、このような催しの規模もまるで桁違いだ……」「ところで、社長夫人はご覧になった? とても綺麗な方で嫉妬しちゃうわ。それにあの御曹司が婚約していたなんて……」「噂では、黒鉄家の娘が身売りに出された、とも聞いているが、どうだろうね」「まあ……」業界の様々な噂話が飛び交う中、もっとも人からの注目を集めていたのは、やはりパーティーの主役である御堂財閥CEOの恭司と、今回初めて公に披露される形となった燐であった。「恭司さん、お久しぶりです。そしてこちらが……」「恭司の妻の、燐です。初めまして」「おお、こちらこそ初めまして。なんとも美しい妻を貰ったようで……」燐は恭司の隣で社長夫人としての姿を演じ続けていた。周りにはどうやら好評のようで、特に大きな事件もなく客人たちの挨拶回りは進んでいく。このまま何事もなく――そ
last updateLast Updated : 2026-09-06
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第12話

広いパーティー会場、中央、沢山の人々の関心が向けられる中で、燐は華から突きつけられた言葉に押し黙る。「あら、燐様。どうされました……?」意地悪に微笑む華。燐は――ため息の後に口を開いた。「……どのようなものでも?」「ええ、構いませんわ」「わかりました」皆の注目が燐に突き刺さる。その中で――彼女は華を睨み付けた。「次の月の終わりまでに、九条財閥の株価を、今より一割落としてみせましょう」その言葉に場が一気にざわめく。燐と華、二人の女の対立の一片が露わになる。淡々とした顔の燐の横で、恭司さえも眉を上げて表情を変える中――華は瞼を閉じたまま燐の言葉をしばらく頭で反芻すると、首を小さく横に振ってから目を開き、どこか相手を小馬鹿にするような笑みで言葉を返した。「あなた……随分と夢のない魔法ね」「夢、ですか。そういう魔法をご所望なら、パークのチケットでも買ってみては?」言葉の刃が飛び交う中、燐と華は二人だけの世界でぎろりと睨み合う。「そう言えば、興味深い話がありますの。貴女……“落ちこぼれの魔女”なんですって? 噂の真相を確かめる良い機会になるかしら」「構いませんよ。ですがその代わり――」燐の瞳の中で、冷たい炎が立ち上った。「――私の言う通りになった場合、御堂の敷居は、二度と自由に跨げないものと思ってください」燐がそう言い放つと、華は一瞬口を開くも言葉を詰まらせ……それでも、気勢で押し負けまいと一歩前へ出る。二人の顔が至近距離まで詰まる――「いいわ。その挑戦、受けてあげる。せいぜい無様を晒さないことね……」周りの人々が野次馬となり、この後の流れを口々に囁き合う中。華は最後、燐にだけ聞こえるような小さな声で唇をひそかに動かした。「やってみせろよ、貧血魔女」「……!」燐がハッとした直後、華は何事もなかったような笑みに戻ると恭司に一礼していた。そして恭司に「また今度」と述べてから、近くのウェイターが運ぶシャンパングラスを取って離れていく。(……なんなの、あの女?)(もう、分かったわ)(貴女がそこまで言うのなら……私も)華という嵐が去った後、他の人たちは場の空気を掴みかねていた。その中で燐と恭司は二人きりとなる。燐が一人難しい表情をしていると、恭司が横から――言葉を選びながら囁きかけた。「……すまなかった」「別に。良い
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