เข้าสู่ระบบ契約結婚から二年。黒鉄燐(くろがね りん)は、その身に宿す『魔女の血』をベッドの上で採られ続けていた。実家では魔法の才がなく「落ちこぼれ」と言われ続け、結婚後も旦那の御堂恭司(みどう きょうじ)からは冷たい扱いをされる日々。御堂財閥CEOの彼が気にかけるのは、ビジネスパートナーを名乗る社長令嬢、九条華(くじょう はな)だけ……? 屈辱を重ねてきた燐は、ある夜の晩餐会で華と対峙して静かに宣言する。「来月末までに、九条財閥の株価を一割落としてみせましょう」。自らの頭脳と情報網を武器に、今まで疎まれてきた魔女がその牙を剥く。逆襲が始まる。
ดูเพิ่มเติม第57話「何度来たって同じだよ、社長さん」取締役会まで残り五日となった日の朝。この日も榊の茶工房を訪ねた燐は、戸口に立ったところで榊からそう言われていた。榊は作業台から顔も上げない。平ざるの茶葉を選り分ける手だけが、黙々と動き続けている。「あのジジイは、あれから何か言ってたのかい」「……いいえ。先日伺ったのですが、何も」「そうかい」短い返事だった。榊はまた手を動かし始める。「社長さんがどうにかしようとしてくれている、その心意気は買うよ。でも、これはどこまで行っても社長さんの問題じゃないんだ。……分かったら、また来な」「……分かりました。また伺います」燐は頭を下げて工房を出た。古株の職人が気の毒そうな目で見送ってくれたが、それだけだった。バス停へ向かう道を歩きながら考える。篠原、真壁、久我、芹――燐の側は四人。東條、氷室、水瀬、そして三枝――三枝が約束どおり白銀に入れれば、優真の側も四人。最後の一票は、榊が握っている。しかしそれは燐個人にはどうにもできない問題に思えていた。(このままだと、もしかしたら……)(いっそのこと、三枝さんに頭を下げて、考え直してもらう……?)一瞬だけそんな考えが頭をよぎった。けれど燐はすぐに首を振る。三枝には入院中の子供がいる。白銀側に入れても大丈夫なようにすると約束したのは、他でもない燐自身だった。その約束は反故にはしたくない。入院中――その言葉を思い浮かべた瞬間、燐はハッと気が付いて、バス停の前で立ち止まる。燐は鞄からスマートフォンを取り出した。呼び出したのは……病院にいる母の番号だった。『……もしもし、燐?』「お母様? いま、大丈夫?」『ええ、いいわよ。どうした
第56話翌朝、始業の一時間前。窓の外がようやく白み始めた頃、まだ誰もいないオフィスで篠原はホワイトボードの前に立っていた。「昨夜のうちに、他の会議の議事録もすべて確かめました。書き換えられていたのは、芹さんの事業について話し合ったあの回の一箇所だけです」「わざわざ、そこだけを……誰がやったの?」「ファイルの更新履歴を見ると、別部署の端末から書き換えられていました。おそらくは……氷室さんか、水瀬さん」氷室と水瀬。東條と同じ、燐の解任に賛成する派閥の役員だ。優真の手引きで入ってきた彼女たちはこのような工作活動まで行っていたのだ。「そこまでして、私のことを社長から引きずり下ろしたいのね」「議事録は細かな言い回しが変わっています。読み流せば気付かない程度に……」篠原の声は淡々としていたが、その目は燐よりも怒りに燃えているのが分かる。燐はしばらく考え込んだ。保管庫は昨夜のうちに篠原と二人で隅々まで探したが、あの録音機だけがどこにも見当たらなかった。おそらくは証拠を隠そうとしたのだろう。持ち出した誰かが社外へ捨てていればもう取り戻す手立てはない。けれど――もしまだ社内のどこかにあるのなら?「社内を探すのには時間がかかりすぎます。私たちが探し始めたのが相手方に悟られれば、いま残っていたとしても、いずれ消される可能性が高いです」「……篠原さん。芹さんを呼んでもらえる?」「芹さんを?」燐は腹の底で覚悟を決めて、篠原の言葉に頷いていた。 *「どうして私がそんなことをしなきゃいけないんですか」朝一で会議室に呼ばれた芹は、燐の頼みを聞くなり不満をぶつけた。目の下にはうっすらと隈がある。昨夜はあまり眠れなかったのだろう。それでも燐を見る目つきは昨日と同じく睨みつけるようなものだった。「なくした録音機を、芹さんの魔法で探してほしいの。あの会議で私が
第55話その日の昼休み、燐は芹が給湯室に一人で向かったタイミングを見て、少し早足でその後を追った。「芹さん、少しいい?」燐が声をかけると、給湯室で湯を沸かしていた芹の肩がびくりと跳ねる。それから、彼女は恐る恐るといった様子でゆっくり振り返った。「……はい。なんですか、社長」返事は硬かった。少し前までは燐の顔を見るなり駆け寄ってきて、仕事の話を嬉しそうに聞かせてくれる子だったのに。芹は、取締役会の話が出てからは目に見えて変わった。昼休みは燐のいない時間を選んで休憩室に入り、廊下ですれ違っても会釈だけで足早に去っていく。燐にはその理由がどうしても思い当たらなかった。取締役会まで残り十日を切っている。なんとしても、芹の真意を把握しておかなければならない。「その……二人で、話をしたいの。今日、仕事が一段落したら、少しだけ時間をもらえないかしら」芹はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。 *定時を過ぎて人の減ったオフィスで、燐と芹は小さな会議室に向かい合って座った。芹は膝の上で両手を握りしめたまま背中を丸め、なかなか顔を上げようとしない。燐がどう接したらいいか迷っていると、芹は小さな声で、しかしはっきりと尋ねる。「……社長。一つだけ、聞いてもいいですか」顔を上げた芹の目が、燐を睨みつけていた。燐が初めて見る、芹の顔だった――「社長が、私の事業を切ろうとしてたって……本当ですか?」「……えっ?」思いも寄らぬ言葉に燐は絶句してしまった。芹は深刻そうな顔で燐を睨みつけている。何かの冗談でもなさそうだ。「そんなわけないじゃない。どうして、そんな……」「優真さんが教えてくれたんです。前の経営会議で、社長が私の事業は効率が悪いから切るべきだって言って……それを、優真さんが
この日、燐は午後からオフィスを出て、黒鉄家の門を潜っていた。(……ちゃんと、話をするしかない)前回は父からの書状で呼びつけられたが、今回は違う。今の燐には榊の票が要る。それを手に入れるために、燐は『黒鉄家』の過去と向き合うしかない――玄関では、いつもの使用人の女性が頭を下げて彼女を出迎えた。昼間だというのに薄暗い廊下を通り、燐は和室の応接間へ入る。「失礼します」「……」座卓の向こうで、父が腕を組んで待っていた。前に会った時よりも、その肩が少しだけ落ちているように見えた。燐の小さい頃はもっと大柄で、筋肉のある腕も印象的に残っていただけに、今の姿がどうにも哀しくて仕方ない。「……呼んでもいないのに来るとはな。燐、今度は何の用だ」「家の話をしに来ました。白銀から、家の事業ごと買い取る話が来ているそうですね」父の眉がぴくりと動いた。「……ふん、しっかり調べているようだな」「優秀な部下たちのお陰です。今の状況は?」父はしばらく黙っていたが、やがて腕を解くと、座卓の上に置いた手を見下ろした。「取引先はもう半分も残っておらん。このまま意地を張って家ごと沈むか、白銀に売って食い繋ぐか。……どちらにしても、黒鉄の名に先はない」「白銀に売れば、名前も残りません」燐は鞄から一枚の紙を出して、座卓の上に置いた。真壁がまとめた、白銀に吸収された事業の一覧だ。「この十五年で白銀に入った魔女の事業は、三十を超えています。今も元の名前で残っているものは一つもありません」父は紙を手に取った。それから一行ずつ目で追っていき……最後まで読み終えても、父は長いこと何も言わなかった。「お父様。私が黒鉄キャピタルの社長に残ったら、この家を黒鉄キャピタルとして支えます」「……何を言うかと思えば。娘の





