世界観世界が崩壊を始めるのは午後1時13分。空が1度だけ白く明滅し、世界中のスマートフォン、街頭モニター、電車内ディスプレイ、テレビ、カーナビへ同一の文字列が表示される。〈SURVIVAL RESIDENCEへようこそ〉その瞬間、一部の集合住宅、ホテル、病院、学校、商業施設が異常空間へ取り込まれ、選ばれた人間の目前へ個人用の〈居室〉が生成される。選ばれなかった者に部屋は与えられない。政府高官でも、乳児でも、医師でも、資産家でも例外はない。部屋を持たない人間は、感染者、異常気象、都市崩落、食料不足、プレイヤーによる略奪に直接晒される。システムは1度も「30日間耐えれば救われる」と告知しない。それでも人間たちは勝手に、30日間を生き延びれば救助される、ゲームをクリアすれば元の世界へ帰れる、どこかに安全地帯があると信じ始める。だが、ステージを突破した先にあるのは、さらに死亡率の高い新しいステージだけである。世界地図から都市が1つずつ消える。国別チャットから言語が1つずつ消える。人工衛星からの映像も途切れていく。それでもシステムは毎朝6時、何事もないように通知する。〈本日も快適なサバイバル生活をお楽しみください〉画面右上には常に〈人類残存数〉が表示される。数字は増えない。ただ減り続ける。世帯リンク終末開始時点で法的な婚姻関係または同一世帯として登録されているプレイヤーには、個人居室とは別に〈世帯リンク〉が発生する。世帯リンクへ所属した家族は、初期段階に限り、食料、水、回復物資、緊急避難権など一部の生存リソースを共同化できる。一見すれば家族を守るための救済制度に見える。しかし世帯主には〈構成員切離し権〉が与えられている。家族1人を世帯リンクから切り離した場合、その人物は家族共有倉庫、共同回復、緊急避難、代理入室などの権限を失う。その一方で、切離し以前に家族倉庫へ提供した物資は返還されない。さらに切離し処理は大きな警告ではなく世帯管理履歴へ記録されるだけのため、仕組みを理解していなければ、自分だけが家族から除外されたことに気づかない場合がある。1周目の航志は、システム開始直後に灰乃を世帯リンクから切り離していた。だが灰乃には知らせなかった。灰乃は自分も家族共有の恩恵を受けられると思い込み、感染者のいる区域へ入り、水、食料
Last Updated : 2026-09-03 Read more