そばにいた看護師たちは莉奈の話を聞き、笑いながら口々に言った。「水野さんは本当に幸せですね」「黒川先生、普段はあんなにそっけないのに、水野さんには本当に細やかですもの」「そうそう。特別診療枠はなかなか取れないのに、先生がひと言頼めば、水野さんは毎回すぐ診てもらえるんですから」莉奈は目を細めて笑った。「そんなことないですよ。創真は昔から気が利くんです」控えめに否定しているようで、その声には得意げな響きが隠しきれずににじんでいた。私はその場に立ち尽くし、母の診察受付票を少しずつ握りしめた。昨夜からほとんど眠らずに予約枠を確認し続け、午前4時になってようやく取れた予約だった。一般外来で待ち、検査室で待ち、会計でもまた待った。足の悪い母は顔を青ざめさせながら、それでもずっと「大丈夫」と言っていた。それなのに創真はどうだろう。彼なら、ひと言確認するくらいはできたはずだ。たったひと言でよかった。けれど、彼が私に返す答えは、いつも「原則」だった。今すぐ駆け寄って問い詰めたかった。創真。あなたの原則はどこへ行ったの。あれほど特別扱いを嫌っていたのは、何だったの。ところが一歩踏み出した途端、母に手首をつかまれた。やせ細った手の関節が食い込み、痛いほどだった。「美緒、行かないで」母は首を横に振り、私をなだめた。「私のことで創真くんと喧嘩しないで。仕事も忙しいし、プレッシャーだって大きいでしょう。それに、ちゃんと診てもらえたんだから、少しくらい待ってもいいじゃない」鼻の奥がつんとした。問題は、少し待つことではなかった。この3年間だった。初めて断られて以来、私は一度も彼に助けを求めなかった。困らせたくなかった。聞き分けのない女だと思われたくなかった。私が「わきまえのないこと」をすれば、二人の関係まで気まずくなってしまう気がしていた。けれど今、颯真は自ら莉奈に付き添い、看護師に一つひとつ細かく念を押していた。「セフェム系抗菌薬にアレルギーがある。カルテにはっきり書いておいて。痛みに弱いから、採血はできるだけ優しく。それから消毒液のにおいが苦手だから、診察室の換気もお願い」淡々とした声だったが、ひと言ひと言に細やかな気遣いがこもっていた。莉奈が彼を見上げ、嬉しそうに笑
Read more