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第8話

Author: 山田奈々子
彼からの誕生日の言葉を待った。

私だけに向ける特別な扱いを待った。

たった一度でいいから、私のために原則を曲げてくれる日を待った。

自分がまだ足りないからだと思っていた。

もっと聞き分けよく、もっと思いやりを持ち、もっと彼に尽くさなければならないのだと。

ところが莉奈が現れた。

彼女は何もしなくてよかった。ただそこにいるだけで、創真は、私がどれほど望んでも手に入らなかったものを、何もかも差し出した。

スーツケースのファスナーを閉じた、そのときだった。

背後で扉が開いた。

創真が立っていた。

白衣から着替える暇もなかったらしく、手にはスマホを握っていた。

足元のスーツケースを見た瞬間、その場に縫いつけられたように動かなくなった。

「出ていくのか?」

声は今にも切れそうな糸のように、張り詰めていた。

私は顔を上げず、最後のセーターをスーツケースに押し込んだ。

「今月分の家賃はもう払ってあるから、来月までは住める。敷金は返さなくていい。早く解約する分に充てて」

「美緒」

彼は大股で近づき、スーツケースを手で押さえた。

「話をしよう」

私は体を起こし、よう
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