第11話 冷徹CEOが、私の狭い部屋にいる 翌日の仕事を終えた結衣が自宅マンションへ戻ったのは、午後九時を少し回った頃だった。 昨夜はエマのことが気になってなかなか寝つけず、朝から続いた通訳の仕事も忙しかったせいで、さすがに体が重い。エレベーターの鏡に映った自分の顔を見れば、化粧は崩れ、髪も朝よりずいぶん乱れている。「今日はもう、お風呂入って寝よう……」 夕食はコンビニで買ったおにぎりとスープでいい。 洗濯物は明日。 部屋も多少散らかっているが、誰かが来るわけでもない。 そう思いながら自分の階でエレベーターを降りた結衣は、廊下の奥を見て足を止めた。 自宅のドアの前に、男が立っている。 黒いコート。 長身。 このマンションには似合わないほど隙のない姿。「……何してるんですか」 九条玲司だった。 彼は壁にもたれることさえせず、まるで高級ホテルのロビーで人を待っているかのように真っ直ぐ立っていた。「遅かったな」「仕事ですから。それより、どうしてここにいるんです?」「待っていた」「それは見れば分かります」 結衣はため息をつきながら近づいた。「連絡くらいしてくださいよ」「した」「え?」 スマートフォンを確認する。 着信が三件。 メッセージも一件。『仕事が終わったら連絡してくれ。』「本当だ」「見ていなかったのか」「仕事中は触れないことがあるんです」「二時間以上待った」 結衣は思
Last Updated : 2026-09-12 Read more