All Chapters of 逆転ヒロイン阻止株式会社 ~不運続きの私が人生逆転を決意したら謎のイケメンに阻止宣言されましたが、絶対に負けません~: Chapter 11 - Chapter 15

15 Chapters

第11話 SNSを始めたら通報されました③

 あまりにもありえない展開。 頭ではそうなのだろうとわかりつつも、体が納得しているとは言えず。 しかし、あの聞こえてきた声。 あれは、自分の中の現実感どうこうの問題ではなく、確かな事実。尋常ならざる事態が起こっているのは、どうやら間違いなさそうだ。 光凛は近くの小さな交番に飛び込むように入った。「あ、あのっ!!」「……? はい。何でしょう」 光凛を迎えたのは、無表情な若い警察官だった。「たぶん、誘拐か何かです! ヤバいので! 何とかできますか!?」「はい? ちょっと落ち着いて」「さっき友達から電話があったんですけど、無言で! それで、少し遠くから、何人かの男の人の声が聞こえてきて! 普通じゃないみたいで!」「……? 音声は録音してますか?」「してません。急にかかってきたので」「現場は?」「わかりません」「その友人が誘拐されたという証拠はありますか?」「ありません。でも絶対普通じゃなかったです!」 警察官は最初困惑したような顔をしていたが、証拠の類が一切ないとわかってくると、一転、面倒そうな顔を隠さなくなった。「うーん、何の根拠もなく『たぶん誘拐です』と言われてもね。こちらも今の情報だけじゃ動きようがないんですよ。友人の方に連絡は取れないんですか?」「いえ、さっきの電話以降は……。こちらからかけても反応なしです」「では、何か新しい情報が入ったら、また来てください」 ほどなく、光凛は交番の外へと追い出された。 ――やばい。 光凛は焦った。 不穏な声を聞いたということが唯一の根拠だ。 しかもそれは自分の耳で聞いたというだけで、録音データはない。 うまく警察を動かせるように説明する力も、自分にはない。 自分では何度警察に飛び込んでもうまく伝えられない。 自分ではダメだ。 他の人ならばともかく…… ……他の人ならば? 自分でなければ、うまく警察に危機を説明できるかもしれない。 頭のよい人であればあるほど可能性は上がるだろう。 自分の知る範囲内で、頭のよさそうな人物……。 ……。 一人、いる。 よさそうどころか、確実によい人物。 光凛は迷わなかった。 電話アプリを開き、名刺を見ながら、電話をかけた。「やあお姉さん。そっちからかけてくれるなんて――」「高宮、お願い。助けて」「……」「いるんでしょ
last updateLast Updated : 2026-10-07
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第12話 SNSを始めたら通報されました④

「ここだね。テンプレっぽい、いかにもな現場だ」 そう言って高宮がバイクを止めたのは、大きな倉庫のような建物の前だった。 すでに使われていないのか、前面の出入り口と思われる大きなシャッターは閉まっており、グラフィティアートと言うほどアートには感じない落書きがなされていた。無数に付いている小さな窓ガラスは、割れているものも目立つ。「ちょ、ちょっと、あんた。こんなに堂々と?」 光凛が驚いたのは、堂々と建物の真ん前にバイクを止めたことだけではなかった。 涼しげな顔でヘルメットを脱いだ高宮が、光凛の手を引きながら普通に建物に近づこうとしたことだった。「こっちの偵察さんいわく、飛び道具はなし。顔認証でこっちのデータベースに照会もかけてもらったけど、現役の暴力団員でもないらしい。拳銃を持てるような人たちじゃないね」 そして建物の横に回り込み、おそらく犯人が入ったのであろう小さな扉を見つけ、近づいていく。「じゃあ、これから中に入るよ。お姉さんはできれば扉の外で待っていてほしいけど、お友達の安否は気になるだろうから……ちょっと覗くくらいの感じでよろしくね」 あまりにも彼が平然としているので、光凛の心拍も徐々に落ち着いてきていた。「なんかチャチャッとやってきますわ的なノリに聞こえるけど」「そうだよ? 犯人にゆっくり近づいてわざわざ足を止めて会話したりすると思ってたなら、それは漫画とか小説の読みすぎかな。こういうのはね、無言のままいきなり近づいていって、いきなりドカンとやっちゃうのが一番安全」「……ナイフとかは持ってる可能性あるんじゃない?」「お、心配してくれちゃってたりする? でも大丈夫だよ。ナイフはその人の腕以上の動きはしないし。三人いるらしいけど、頭がいい人たちでもないだろうから、割と安全」「なんでそこまでわかるの」「現代日本だと誘拐って割に合わない犯罪なんだ。身代金目的であろうが、わいせつ目的であろうがね。法定刑は重いし、成功したところで逮捕される可能性が高い。だから年間の発生件数も少ないよ。そういうのをやっちゃう人たちだから、まあそういうこと」「落ち着きすぎて怖いわ、あんた」「今回は勝てるってわかっているからさ。僕はちゃんと訓練を受けているから安心して。こういうレベルの相手は何人いようが負けることはないよ」 じゃあ、行ってくるから――そう言っ
last updateLast Updated : 2026-10-11
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第13話 SNS活動を再開させたら妙なことになりました①

「あ、そうそう。そろそろ時期的に凍結解除されてると思うよ。グイッター」 ランチを食べ終え、タイミングよく出てきた食後のスイーツに手をつけていると、高宮士元がそんなことを言いだした。 半信半疑のまま光凛がスマホでグイッターのアプリを開くと、タイムラインが正常に表示された。「お、ホントだ! 凍結が解除されてる!」「でしょ」 アカウントを凍結されてからはアプリを開いていなかったため、懐かしい画面でもある。「よーし。またSNS頑張ろっと」「またBANされないようにね」「通報したであろう張本人が言うなや」「あ。僕の白玉団子が」「アカウント凍結の損害賠償としていただいときます。というか、その歳で宇治抹茶白玉パフェってどうなの」「だって好きだし。お姉さんも人のこと言えなくない?」「あっ。わたしのわらび餅が」「この前の誘拐事件解決の報酬としてもらっとくね。一つ」 あまりにも安い報酬。 ただ、わらび餅一個を頬張る彼の微笑を見ていると、もうあの件については終了という謎の圧も光凛は感じた。「お、このわらび餅はおいしいね。餅もきな粉も。やっぱりもう一つちょうだい」「いいけど。あんた、和スイーツ全般が好きな感じ?」「うん。好き」 一個一個食べるたびに微妙にきな粉で咳込みそうになる光凛とは対照的に、彼は上手に食べる。 今日は光凛も意識して観察してしまっていたせいか、箸の使い方も上手で、食べ物もこぼさず、こういうリラックスしている場でも有り余る能力が伝わってきてしまった。 わからない、と光凛は思う。 今日も会社の昼休みに外に出たら、彼が待ち構えており。そして「ターゲットから直接情報収集するのが一番早いからね」などというふざけた理由でランチへと強引に誘われ。先日の誘拐事件のことがあったので、特に抵抗せずに一緒にこのカフェに入っていたが……。 本来であれば、もっと彼に釣り合う人間がここに座っているべきなのではないか。むしろ光凛のほうが焦ってしまうのである。 元カレの相原亮二もかなり高スペック男であったため、付き合いたての頃は一緒にいるだけで謎の申し訳なさがあったのだが、この高宮士元という青年はそれ以上だった。 ここまで来る時間。待ち構えている時間。ここで一緒に過ごす時間。ここから帰る時間。彼にとっては、あまりにももったいないのではないか
last updateLast Updated : 2026-10-14
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第14話 SNS活動を再開させたら妙なことになりました②

 ちょうど陽が沈み切った頃。 光凛は、スマホの地図アプリを見ながら、大通りから一本外れた二車線の道を歩いていた。 逆転ヒロイン阻止株式会社、高宮士元。 その飾り気のない名刺には、電話番号とともに、事務所の住所も書いてあった。 目指しているのは、その住所である。「ここかー」 通りは明るいので、よく見えた。こぢんまりとして小綺麗な三階建てビルだった。 この二階に事務所があることになっている。 ただ、光凛が見上げても袖看板などはない。電気はついているようだが、窓にも特に社名のステッカーは貼られていない。「地図を見ながら歩いているのになぜか二度も迷って徒歩七分のところを十五分もかけて辿り着く禿光凛さん、こんばんは」 振り向くと、高宮がいた。「なんで後ろから来るの」「尾行してたからに決まってるじゃん」「安定のキモさだなキサマ。ま、今は文句言える立場じゃないけど」 グイッターで届いたあの重いダイレクトメッセージの主に、光凛は「知り合いに弁護士資格を持つ優秀な人物がいて、自分も何度か助けられています。その人物にあなたのメッセージを見せて相談してもいいですか?」と返していた。 それにはすぐ、OKの返事が来た。 光凛としては安心したのだが、同時に「相談料を払わせてほしい」という申し出があり、その意思が強固に感じられたため、それも含めて高宮に相談していた。『お金をもらう以上は、事務所に来てもらったほうがいいのかもね。近ければだけど』 幸いにも相談者は電車で来られる場所に住んでおり、最寄り駅からは光凛が連れていくことになっていた。ただ、本番は明日だ。 方向音痴の光凛は道を事前に確認しておきたかったのと、そもそも彼の事務所を外からすら見たことがなかったのとで、今日は会社の帰りに高宮本人に内緒で下見に来たのだが。 彼の尾行スキルがとんでもないことを忘れていた。「どうせ心配になって下見に来たんでしょ? せっかくだから中も見ていきなよ」 この余裕である。 入り口のウォールナットのドアには、さすがに小さな表札が貼られていた。「どうぞ」 言われて中に入ると、外見から想像できたとおり、広くはない。 受付などもなく、玄関の先はすぐに応接室風の空間になっていた。 一見、きれいだった。「ちょっとここのソファーに座って待っ
last updateLast Updated : 2026-10-18
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第15話 SNS活動を再開させたら妙なことになりました③

「ぐ、ぐるじい……面倒はちゃんと最後まで見るってば」 光凛の腕で首を絞められた高宮は、その腕ををポンポンと手で叩き降参の意を表した。「なら言い方を何とかしろ。寄り添え。今『手遅れ』とか言っただろ」「ごめんごめん。でも一応それって間違いではないんだよね。こちらの安田さんのケースは、闇バイトの運び役を実際にやってしまった状態だし、犯罪に問われる可能性は十分ある。『知らなかった』はなかなか通らない。このまま放っておくと逮捕リスクとか起訴リスクだって普通にあると思うよ」 逮捕。起訴。 その言葉に、相談者の安田は顔を青ざめさせた。「やっぱり……そうなんですか……」 ついに高宮を直視できなくなり、安田は顔を伏せてしまった。 暑くも寒くもない部屋だが、彼女だけが汗をかいている。「逮捕って。何とかならないの?」「まあ、あくまでも放っておけばってことだから。弁護士が……この場合は僕だね。僕が警察まで同伴して『闇バイトに巻き込まれて』って相談に行く形にすれば、いきなり逮捕される可能性はけっこう下がると思う」「お。そうなんだね。よかった。じゃあそれで解決になるの?」「いいや、それだけだと多分解決にならなくて」 安田がかなりショックを受けているようなので、光凛が聞き手役のような形になっている。 高宮が隣に自分を座らせたのは、こういう意味だったのか? と光凛なりに考えた。「安田さんは『日常を取り戻したい』んだよね?」「はい。そうです」「これもさ、残念なことだけど、一度闇バイトに関わってしまうと、その後もなかなか難しいんだよね。個人情報を握られてしまっているとなると、こっちが警察に行ったりしたらそれを使って報復してくる可能性とかも考えるべきだね」 安田が顔を伏せたまま、スカートの裾を握った。「安心して。それも大切なことだから、こちらで引き受けるよ。そうしないとずっと怯え続けないといけないことになるからね。あとは――」 高宮はもう一つ問題点を指摘する。「安田さんのマインドも、だよなあ。闇バイトに飛びついてしまうような人は、やっぱり簡単に稼ごうとか、ちょっと前までの僕の隣の誰かさんみたいに『手軽に人生一発逆転』とか、甘く軽い考えがあるので、それを捨ててもらわないとこの先も――痛ぇっ」「悪かったな、甘く軽くで。安田さんのこの感じで反省してないわけないでし
last updateLast Updated : 2026-10-21
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