あまりにもありえない展開。 頭ではそうなのだろうとわかりつつも、体が納得しているとは言えず。 しかし、あの聞こえてきた声。 あれは、自分の中の現実感どうこうの問題ではなく、確かな事実。尋常ならざる事態が起こっているのは、どうやら間違いなさそうだ。 光凛は近くの小さな交番に飛び込むように入った。「あ、あのっ!!」「……? はい。何でしょう」 光凛を迎えたのは、無表情な若い警察官だった。「たぶん、誘拐か何かです! ヤバいので! 何とかできますか!?」「はい? ちょっと落ち着いて」「さっき友達から電話があったんですけど、無言で! それで、少し遠くから、何人かの男の人の声が聞こえてきて! 普通じゃないみたいで!」「……? 音声は録音してますか?」「してません。急にかかってきたので」「現場は?」「わかりません」「その友人が誘拐されたという証拠はありますか?」「ありません。でも絶対普通じゃなかったです!」 警察官は最初困惑したような顔をしていたが、証拠の類が一切ないとわかってくると、一転、面倒そうな顔を隠さなくなった。「うーん、何の根拠もなく『たぶん誘拐です』と言われてもね。こちらも今の情報だけじゃ動きようがないんですよ。友人の方に連絡は取れないんですか?」「いえ、さっきの電話以降は……。こちらからかけても反応なしです」「では、何か新しい情報が入ったら、また来てください」 ほどなく、光凛は交番の外へと追い出された。 ――やばい。 光凛は焦った。 不穏な声を聞いたということが唯一の根拠だ。 しかもそれは自分の耳で聞いたというだけで、録音データはない。 うまく警察を動かせるように説明する力も、自分にはない。 自分では何度警察に飛び込んでもうまく伝えられない。 自分ではダメだ。 他の人ならばともかく…… ……他の人ならば? 自分でなければ、うまく警察に危機を説明できるかもしれない。 頭のよい人であればあるほど可能性は上がるだろう。 自分の知る範囲内で、頭のよさそうな人物……。 ……。 一人、いる。 よさそうどころか、確実によい人物。 光凛は迷わなかった。 電話アプリを開き、名刺を見ながら、電話をかけた。「やあお姉さん。そっちからかけてくれるなんて――」「高宮、お願い。助けて」「……」「いるんでしょ
Last Updated : 2026-10-07 Read more