「会社のメール!? しかも発注メールで!? ふざけんなー!!」 こんなことってあるのだろうか? と、禿光凛は思った。 開いたメールの送り主は、取引先の社員・相原亮二だった。東証プライム上場企業で主任を務めている人物であり、さらに言えば光凛の交際相手でもある。 亮二とは仕事でのやりとりをきっかけにして知り合った。彼はその会社の社長の甥という血筋もさることながら、仕事ぶりの評価も非常に高く、将来を嘱望されているという。「ヒカリ殿。いかがなされた」 旧態依然な島型レイアウトのオフィス。光凛のデスクの向かいに座っていた同僚の宇治丸鹿之助が、角ばった顔をモニタ越しに向けてきた。「ビジネスメールのついでに振られたの!! ありえないでしょ!」 メールの文面はほぼいつもの発注メールであったが、最後だけが違っていた。『このメールをもってあなたとの交際は終了とさせていただく。今まで継続させていただいてきた週末のデート等も一切を打ち切らせていただき、以後は前のような取引先の社員同士という関係に戻させていただく』「なるほど。それは難儀でござるな。理由は何でござろうか」「わからない。たった今『は? 何で?』って返したとこ」 そう言ってため息をつくと同時に、光凛のメールアプリに未読1のサインが灯った。「あ、返ってきた。早っ!! どれどれ……『既に交際は終了とさせていただいており、私は貴女とプライベートな関係はない。よってビジネス以外のご質問にお答えさせていただく立場にないため、一切の説明を控えさせていただく』……ふざけんなコノヤロー!!」「政治家の答弁みたいなコメントでござるな。同情するでござる」 癖のある文面ゆえ、亮二本人が書いたものであることは疑わなかった。 光凛にとって、これは四度目の失恋であった。 高校時代、同級生の彼氏は万引きで退学。大学時代、同じゼミの彼氏は教授を殴ってやはり退学。その後に付き合ったバイト先の彼氏は借金で夜逃げ。なぜか全員、社会からログアウトしてしまった。 今回の相手は、おそらく将来の大企業役員、しかも容姿端麗。 え? まさかの夢のような玉の輿コース? 交際が始まったときはそう思ったものだが、突然の破局となった。「あー、やっぱり私じゃ格差がありすぎて釣り合わなか
最終更新日 : 2026-09-08 続きを読む