言いかけた言葉が、喉で止まった。直樹は、5年間育ててきた娘を見つめた。聞き返す声がかすれた。「ボディー……ガード?」「そうだよ。だからママと一緒に、お見舞いに来てるんでしょ?」芽依は迷いもなく答えた。直樹は黙ったまま、娘の顔を見つめた。冗談だと言ってほしかった。今にもベッドに駆け寄ってきて手を握り、「うそだって分かってたから、合わせてあげたんだよ」と笑うのではないか。だが、芽依の表情は真剣そのものだった。怜奈の袖を引き、もっともらしく続けた。「ママ、高瀬さんは私を助けてけがしたんだよ。ボーナス、いっぱいあげてね」何を聞かされているのか、理解できなかった。命を懸けて守った娘にとって、自分はボディーガードでしかないのか。では、父親には誰を選ぶつもりなのか。拓海なのか。胸の奥が鋭く痛んだ。こみ上げる問いをのみ込むために、直樹は拳を握りしめた。それから、ずっと黙っている怜奈に目を向けた。娘だけでなく、7年連れ添った妻の心にも、自分の居場所はあるのか。それを知りたかった。目が合うと、怜奈はわずかにためらった。だが何も言わず、芽依を病室の外へ連れ出した。胸の内が、ゆっくりと冷えていった。否定しなかった。それが答えだった。直樹は全身の痛みをこらえてベッドを下り、病室のドアにもたれた。小窓の向こうで、怜奈が芽依の前にしゃがんだ。怒りを抑えた声が聞こえた。「芽依、どうしてパパをボディーガードだなんて言ったの?」芽依は不満そうに口をとがらせた。「拓海お兄ちゃんにパパになってほしいんだもん。一緒にいると楽しいし。パパはだめって言ってばっかりで、嫌なの。それに拓海お兄ちゃんは絵がすごく上手なんだよ。パパなんて、ずっと家にいるだけで何もできないじゃん」娘の口からはっきり聞かされ、直樹の膝から力が抜けた。ドアにもたれたまま、その場に座り込んだ。やはり、聞き間違いではなかった。芽依は、自分の父親をボディーガードに追いやってでも、拓海を父親にしたいのだ。拓海の名を聞くと、怜奈の声から怒気が薄れた。それでも厳しい顔は崩さなかった。「だからって、うそをついていいわけじゃないでしょう」「でも、パパは自分が誰かも分からないんだよ?お願い、ママ。拓海お兄ちゃんも、私のパパになりたいって言ってたもん
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