その可能性に思い至った途端、喉が締めつけられ、息ができなくなった。記憶を失っていなかったのなら、この7日間、自分と芽依はどれほど直樹を傷つけたのだろう。呆然とする怜奈を、使用人はやりきれない思いで見ていた。芽依が生まれて間もない頃から、この家の食事を作ってきた。芽依の成長も、親子3人が仲むつまじく暮らす様子も見てきた。それが7日前、怜奈は使用人を全員集め、1週間だけ別の男を家の主人として扱うよう告げた。本来の夫は、ボディーガードになった。50年以上生きていれば、拓海の計算も、直樹の失望も分かる。怜奈に伝えようと思ったこともあった。だが、雇われている身で、家庭のことに口を出す勇気はなかった。けれど、今日、直樹が出ていくのを見て、もう黙っていられなくなった。「奥様、私はここで長く働かせていただいていますが、ご主人は私たちにもいつも親切でした。理不尽に叱られたことなど、一度もありません。今日、成瀬様の具合が悪くなったときも、私はずっとご主人と一緒にいたんです。下ごしらえを手伝ってくださっていて、マンゴージュースには一度も手を触れていらっしゃいません。それなのに、お2人は説明も聞かず、あんなことまで……」それ以上は、言えなかった。実の娘が、父親の命を奪いかねない牛乳を無理やり飲ませるなど、誰が想像しただろう。使用人の言葉に、怜奈と芽依は頭を強く殴られたような衝撃を受け、一瞬、何も考えられなくなった。芽依が先に声を上げた。「本当?パパ、マンゴージュースに触ってなかったの?でも、拓海お兄ちゃんは、パパが作ってくれた飲み物だって……」使用人は、重く息をついた。「うそではありません。キッチンの防犯カメラをご確認ください」怜奈の顔から表情が消えた。まさか、拓海が。そんな疑いが、頭を離れなくなっていた。家を取り仕切る使用人を呼び、キッチンとリビングの防犯映像を出させた。怜奈と芽依は、タブレットの画面を凝視した。直樹は、ずっと下ごしらえをしていた。飲み物には、一度も手を出していない。別の使用人が拓海に飲み物を運んだあと、拓海は周囲の目を盗み、自分でマンゴージュースを注いでいた。言い逃れのできない真実だった。怜奈は青ざめた。直樹はうそをついていなかった。拓海の飲み物にマンゴージュースを入れて
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