婚約パーティーの会場で、私はステージの中央に立っている。智哉は今回も冷たく背を向け、一度も振り返らずに会場を出ていった。いつもそうだった。智哉は親族の視線など気にも留めず、私一人をその場に残した。周囲からあれこれ言われるのも、決まって私だった。私、成瀬玲奈(なるせ れいな)は、あと1年で35歳になる。智哉と付き合って、もう10年だ。私と智哉は幼なじみで、私たちがまだ母親のお腹にいた頃、親同士が将来私たちを結婚させようと約束していた。だが、そんな親同士の約束を本気にする者はいなかった。幼い頃から智哉に片思いし、いつか本当に智哉と結婚できる日を夢見ていたのは私だけだ。ところが、智哉の父・沢田邦夫(さわだ くにお)は古いやり方に固執し、会社の経営を傾かせた。株価は下がり続け、ついには倒産寸前まで追い込まれた。そこで沢田家は昔の約束を持ち出し、成瀬家との縁談を利用して会社を立て直そうとした。長く会社を経営してきた両親は、邦夫の狙いをすぐに見抜き、初めから断るつもりだった。だが、その話を偶然聞いてしまった私は、どうしても智哉と結婚したいと両親に食い下がった。両親は仕方なく折れ、まずは付き合ってみることを許してくれた。両親を含め、誰もが私の気持ちを一時的なものだと思っていた。私なら、もっと家柄のいい相手を選べるからだ。まさか、それが10年も続くとは、誰も思っていなかった。今回で7度目の婚約パーティーだ。会場にいる親族や友人は、1回目や2回目の頃と比べるとずっと少ない。両親さえ来ていない。今も出席してくれるのは、仕事目当てでうちに取り入ろうとする人ばかりだ。壇上に立ったまま、出席者全員の前で智哉に電話をかけた。これを智哉にすがる最後の電話にして、自分で退路を断つつもりだった。「智哉、もういい加減にして。みんな、智哉が来るのを待ってるの。今回でもう7度目なのよ」私の口元にあった司会者のマイクを通し、智哉の声が会場中に響いた。「玲奈、何度言えば分かるんだ。美羽ちゃんは熱を出してる。人の命と、こんな形だけの儀式と、どっちが大事なんだ?10年も付き合ってきたのに、まだ俺を信じられないのか?もう電話してくるな。婚約パーティーなら、また今度ちゃんとやる」引き止めようとした瞬間、智哉は電話を切った。会場中にどよめき
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