Tous les chapitres de : Chapitre 11 - Chapitre 12

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第11話

返してもらったお金と、それまでの貯金を元手に、展覧会の企画を手がける小さなスタジオを立ち上げた。女性をテーマにした展覧会やブランドイベントを専門に手がけた。最初の展覧会には、「私がいる」と名づけた。「私にはある」ではない。私には、私自身がいる。オープニングの日、真帆がひまわりの花束を持ってきた。「水瀬社長、おめでとう」私は笑って受け取った。会場には、ごく普通に暮らす女たちの物語が数多く展示されていた。離婚後、もう一度学び始めた人。裏切られたあと、自分の会社を興した人。子どもを失ったあと、深いうつ状態を乗り越えた人。10年続いた恋を終わらせ、一人でオーロラを見に行った人。どの物語も、男を後悔させるためのものではなかった。女は何度でも人生を始め直せると伝えるためのものだった。展覧会は思いがけない反響を呼んだ。多くのインフルエンサーが会場を訪れ、SNSには感想が次々と投稿された。【「私がいる」を見て、やっと別れる決心がついた。5年という時間が、すべて続ける価値のあるものとは限らない。見切りをつけるべき時を教えてくれる5年だってある】その投稿を見た時、目の奥が少し熱くなった。今度は、光一のせいではなかった。自分の痛みを、ようやく力に変えられたからだった。光一も会場に現れた。オープンから3日目、白いバラの花束を抱えて入口に立っていた。警備員に止めさせることはしなかった。光一は私の前まで来ると、会場中央の壁に目を向けた。そこには、一つの言葉が大きく掲げられていた。【失望は、一つ残らず心に刻まれる。そして別れは、自分を救うための一歩になる】彼の目に涙がにじんだ。「美月、ここにあるものは、全部俺が原因なのか?」私は穏やかに答えた。「あなたは、その一部にすぎない。何よりも、自分のために作ったの」光一は力なく笑った。「今になってやっと分かった。お前はずっと、あんなに俺を支えてくれてたんだな。最近、会社がうまくいってない。お前がいた頃は、いくつもの企画を細かく見てもらってたし、取引先も俺よりお前を信頼していた。いなくなって初めて、俺がどれだけお前に頼り切っていたのか気づいた」私は黙っていた。光一は話し続けた。「玲奈は何度か会社に押しかけてきた。もう弁
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第12話

湊と二人で日の出を見た。水平線が少しずつ明るくなり、金色の光が水面いっぱいに広がっていった。ずっと昔のことのように、玲奈が日の出を口実に、私から光一を奪っていった夜を思い出した。あの頃は、あの夜に負けたことが、5年間のすべてを失うことだと思っていた。けれど、違った。玲奈が奪ったのは、愛する価値のない男だった。そして私は、新しい自分を手に入れた。隣に立つ湊が、温かいコーヒーを差し出した。「寒い?」私は首を振った。湊は必要以上に近づかず、上着だけを差し出した。「それでも、羽織っておいて」上着を受け取ると、海風が髪をさらった。湊は私を見つめ、また耳を赤くした。「水瀬美月」彼が初めて、私をフルネームで呼んだ。「これから、僕にもチャンスをくれない?」真剣で、どこか緊張した顔を見て、私は笑った。「いいよ。でも、好きになれるかは約束できない」湊も笑った。「それでいい。想いを伝えるのは僕の自由だし、応えるかどうかは美月の自由だから」その瞬間、ようやく分かった。本当に好きなら、相手を追い詰めたりはしない。相手を疲れ果てるまで消耗させたり、向けられた愛情を駆け引きの道具にしたりもしない。相手がそこに立ち続けることも、背を向けて去ることも尊重する。その後、私は湊と付き合い始めた。ゆっくりと、穏やかに関係を育てていった。湊は私が魚介アレルギーであることを覚えていた。助手席が低すぎるのは苦手だということも、冬は手が冷えやすいことも、結婚を急かされたくないことも、何一つ忘れなかった。湊がプロポーズしてくれたのは、私が10回目の展覧会を終えた日だった。華やかな演出はなかった。誰もいなくなった会場で、彼は私の手を取り、こう言った。「結婚で美月を縛りたいわけじゃない。ただ、これからの人生を僕と並んで歩いてくれるか、それだけを聞きたいんだ」湊を見つめると、目の奥が熱くなった。その時、光一のことは少しも浮かばなかった。思い出したのは、私自身のことだけだった。個室で最後の指を折った水瀬美月。スーツケースを引き、マンションを出た水瀬美月。海辺で、もう一度息をすることを覚えた水瀬美月。私はうなずいた。「うん。喜んで」結婚式はささやかなものだった。
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