Todos los capítulos de 身分を隠した傷だらけ元王女は皇帝の溺愛に気付かず、今日も無意識にざまぁする。: Capítulo 11 - Capítulo 20

35 Capítulos

11.幻影

 ルイーゼはなんだか頭がぼんやりしていくのを感じていた。そして、曖昧な過去を回想するが無意味だと気が付く。嫉妬に駆られて嫌がらせをするなんて早まったかもしれない。冷静になれば、身分社会の中で、レイラは今帝国の最高位の女性だ。今は姉妹の上下関係も、生まれも関係ない。あるのは今、自分が帝国で最も尊ぶべき女性を侮辱してしまった罪。『安心してください。私は人は過ちを犯すけれど、成長し変われると思っています。国外追放にはしません。でも、貴女はネオラン侯爵夫人とアルトメに行きなさい』 女神のような声はレイラのものだろうか。 ルイーゼはレイラの異能の幻影の中にいた。 そこでは、ルイーゼと彼女の母親が複数の男とまぐわっている。 そんな過去はなかったはずなのに、自分と母は確かに男性関係が奔放だったからあったかもしれない現実だと思い始めた。(これは夢? 本当にあった事? 自分の事なのに神のような視点で回想しているような感覚) ネオラン侯爵の母と娘の醜聞がヴェライユ帝国中に広まる。(こんな過去もなかったとは思うけれど、あんな遊びをしたことがバレたら私は帝国にはいられないわ) 見たことのない風景の街に連れて来られる。 店の看板の文字を見て、そこが現在帝国領になっている元アルトメ王国だと理解した。 皆がルイーゼが歩く度に足を止めて彼女を見る。 そして、男たちが彼女にこっそりと恋文を渡してくる。『ルイーゼ嬢。アルトメに娼館はないんです。でも、娼婦と呼ばれる人は存在します。貴女やネオラン侯爵夫人のように誰とでも寝る女のことです。アルトメでは希少な存在です。アルトメに行けば自然と貴女の居場所ができますよ』 頭に響く声は透き通っていて美しい。(アルトメに行かなきゃ⋯⋯) スッと立ち上がりお茶会の場から立ち去るルイーゼに皆が呆気にとられる。 しかし、ルイーゼの頭の中はアルトメに行けば自分が楽になれるという思いに囚われていた。 彼女はずっと社交界を牛耳る立場であろうと無
last updateÚltima actualización : 2026-10-01
Leer más

12.偽物と本物

『大丈夫ですよ、お姉様』 頭の中で皇后になり手に届かなくなった妹の声がする。『たとえ嫌がらせ目的でも、お姉様は企みのために本を読み漁り夢中になった時間がありましたよね。ワクワクして楽しかったのではないですか?』 急にルイーゼの脳に彼女の脳を蕩けさせるような言葉が流れ込んできて、彼女はその優しい声にうっとりした。『男性に溺れて何が悪いのですか? 好きなものは好きで良いのです。無理して気取るお姉様より、自分の欲求に正直なお姉様が素敵ですわ』 ルイーゼはレイラを見た時に心を奪われそうになった。 美しいと自負していても、彼女には負けると瞬間的に実感した。 彼女から尊敬されたいという欲求と、圧倒的な美貌を持つ女を前に自信を喪失した自分がいつも闘う。(レイラよりも注目されたい! 男にチヤホヤして欲しい!)「私、今すぐアルトメに行きたい!」 現実で、大きな声を出し再び駆け出すルイーゼは側から見ると正気には見えない。 でも、彼女の心は解き放たれていた。 レイラのような恐怖を感じさせる美貌の女はそうそういない。 ならば彼女のいない世界に行けば再び自分が一番になれる。 アルトメに行けば、控えめで気取ったフリをせずに奔放に振舞える。(希少な存在として目立てるのよね。きっと、今度はみんなが私を見て足を止めてくれる!) レイラの幻影の異能は恐ろしい力があった。 幻影を見せた後の相手も使い手の自分も一瞬思考が奪われ、夢と現実の境が分からなくなる。 それは兄のオリバーが予測してた副作用そのものだった。 使い続けた結果も兄の予想通りだとしたら非常に危険だと知りながら、レイラは娼館でその力を使い続けていた。 壊れた女が去るのを見つめながら、レイラは再びお茶会を再開しようと微笑む。「申し訳ありません。私、贈り物を用意してなくて」 先程ジャスミンの効能について尋ねた令嬢が口を開いた。「ふふっ、ミリア嬢。今日こちらにいらして頂けで私は十分ですわ」「い、いえ、そんな私だけ
last updateÚltima actualización : 2026-10-02
Leer más

13.キュン死、一歩手前

 夜の宮殿は、昼の喧噪を洗い流したかのように静かだった。 廊下の燭台に灯る炎がゆらりと揺れ、その光が壁の金装飾を淡く照らしている。 カインは、一人、皇后の寝室へ向かっていた。 呼ばれたのは今しがた。 侍従が耳打ちしたのはただひと言。「皇后陛下が、お呼びです」 その言葉を胸の奥で何度も反芻しながら歩く足音は、普段よりわずかに早い。 しかし緊張で、手のひらには汗が滲んでいた。 扉の前で深呼吸をひとつ。 軽く拳を握り叩こうとしたその瞬間、扉が内側からふわりと開いた。「遅くに失礼いたします、陛下」 そこに立っていたアルベラの姿があまりに可愛らしくて、カインは誰にも彼女を見せたくないと慌てて扉を閉め中に入る。 どこか頬が微かに紅く、柔らかい表情を浮かべる彼女にカインは胸の鼓動が早くなるのを感じた。 カインの胸の奥が熱くなる。 握った拳が震えるのを止められない。 表情に出さぬよう努めても、どうしても口元が綻んでしまう。「君が呼んでくれるとは思わず。少し、驚いた」 カインが思わず視線を逸らしながら戸惑っていると、アルベラは彼の腕に自分の腕を絡めベッドの方へ導く。 カインは頬の筋肉が緩むのを止められない。 喜びを隠そうとしても、湧き上がる熱がどうしても顔に出てしまう。 ベッドに並んで座ると、小首を傾げながら甘えたような顔で彼女が見つめてくる。 全く自分に手出しをせず、いつも自分の要望を聞いてくれるカインに対しアルベラは安心感を抱いていた。 幼い時に双子の兄に甘えていたのと同じ手を使いカインにお願い事をしようと企んでいる。 そんなアルベラの胸の内など知らぬカインはただ照れていた。「陛下が明日からパルテミ王国に向かわれると聞きまして⋯⋯」 パルテミ王国はアルメトの隣国だったが、地下資源で潤っている国だ。 ヴェライユ帝国と敵対関係にあるルートル帝国とも隣接し関係が深いと言われる要注意国家でもある。
last updateÚltima actualización : 2026-10-03
Leer más

14.恥

 甘かった寝室の空気が一瞬にして張り詰められる。 真っ直ぐに見つめてくるアルベラを見て、カインはありのままを感情抜きに話すことにした。「ルートル帝国がアルトメ王国を次の侵略先として狙っているという情報を得ていたんだ。君の父上にヴェライユ帝国と条約を結ばないかと提案したんだが断られた」 今のアルベラはカインが本当はアルトメを侵略して管理下に置くのは最終手段にしていたと理解できた。 確かに地下資源は眠っているかもしれないが、アルトメ王国は文化も国民性も特殊過ぎて支配下に置くと面倒の方が多い。「ルートル帝国が侵略して来ても、娘のアルベラの幻影の異能でなんとかするとでも言ってましたか?」「⋯⋯君の言う通りのやり取りがあった」 アルベラは恥ずかしい気持ちでそっと目を瞑った。 自分の無力さをもっとしっかり父に訴えるべきだったのに、プライドが邪魔した。 プライドばかり高くて無力な自分が、能力もあり周りが見えているカインを前にすると恥ずかしい。 アルベラはカインが自分に気を遣いながら言葉を選んでいる気がした。 ありのままを話して自分を罰して欲しいと思った。「陛下、続けてください。アルトメ王家が諸悪の根源だと思ったのはでないですか?」「すまない。俺は『腐ったアルトメ王家から民を解放する』と声明を出し王城を攻めた⋯⋯」 アルベラは父とカインのやりとりはおろか、その声明があった事実さえ知らない。 ただ、領地を広めたい強欲な暴君が自国を攻めて来たと思った。 ヴェライユの皇帝も結局はルートル帝国のクリフォードと同類だと失望した。 帝国に潜んでから自分の認識を改める機会は沢山あった。 それでも、自分に降りかかった全ての事をヴェライユの皇帝カインのせいにせずにはいられない。 彼と出会した時も、自分の非を棚に上げて彼を責め立てた。 カインが支配欲に満ちた暴君でなければいけなかった。 そうでなければ、自分の今まで信じて来たものも両親も否定される。「陛下、私が前に言った言葉について謝らせてください
last updateÚltima actualización : 2026-10-04
Leer más

15.元娼婦

「本当はみんなが憎かったんです。お兄様の異変に気が付いていたはずなのに、自分の事ばかり⋯⋯。私は誰より自分が憎いです。どうしてもっと早く私自身がお兄様の異変に気がつけなかったのかって、誰より側にいたはずなのに⋯⋯」 子供のように泣き続けるアルベラが泣き止むまでカインはずっと彼女の背を優しく撫で続けた。 アルベラは「いつも前向きなところが好き」だと言われ、婚約までしていた騎士リアンダーにはネガティブな感情をぶつけたことはない。 唯一、本当の自分を見せられるのは、双子の兄のオリバーだけだった。 それなのに、カインの前では醜い感情だって持つありのままの自分でいられる。 彼女は、初夜でカインが自分に手を出さなかった時から、彼に心を開き始めていた。 ーー彼のプライドを傷つけたはずなのに、彼は自分に寄り添ってくれている。 アルベラはどんな自分も受け入れてくれるカインの包容力に安心感を抱いていた。 夜も明けそうなくらいな所でやっと涙を止められた自分をアルベラは恥じた。「陛下、申し訳ありません。少しでも休んでください。外遊の前に今日朝一から公務がありますよね」 気まずそうに謝るアルベラを見て。カインは心底彼女を愛おしいと思った。 彼女が抱えきれない思いを自分に吐き出してくれた事に喜びさせ感じている。「公務の時間になったら瞬間移動でもするから」 冗談で言った言葉にアルベラの目の色が変わる。「やはり瞬間移動の魔法はありますよね。私、確かに見たんです。クリフォード・ルートルが瞬間移動するのを!」 カインはアルベラの言葉にクリフォードの残虐さを再認識した。「アルベラ、そんな魔法はない。あるとしたら瞬間移動できる道具を開発したのだろう」「ヴェライユ帝国では瞬間移動できるような便利道具を開発しようとは思わなかったのですか?」「する訳ないだろう。人間の体を別の場所に飛ばせるかの実験を繰り返す。飛んだ先が海の中だったら? 火山の中だったら?」 アルベラはカインの手が怒りで震えているのに気が付いた。 
last updateÚltima actualización : 2026-10-05
Leer más

16.俺の女

アルベラの背筋が凍る。 しかし表情は崩さない。「下がりなさい。今なら許します」 だが騎士は薄く笑った。 その笑みは、粗野な欲と身分差を無視した歪んだ自尊心を滲ませている。「昔を思い出しました。皇后陛下も感じてくれていたではありませんか。今夜、少し時間をいただければ⋯⋯」 その瞬間だった。 地面を踏み砕くような音が響き、湖面を震わせるほどの怒気が空気を裂く。「その口を閉じろ」 怒号というより、獣が牙を剥いたような声。 森の影から現れたカインは、鎧の上からでもわかるほど全身を怒気で震わせていた。 騎士が驚いて振り返るより早く、 カインの拳が、火矢のような速さで横から叩き込まれた。 鈍い音が森に響き、騎士の身体が地面に転がった。 落ち葉が舞い、鳥が驚いて飛び立つ。「ぐっ陛、下!」 騎士が呻くが、カインは聞く気もない。 カインの眼は、燃えるように怒りで色を深くしている。 湖面に映るその姿は、皇帝ではなく、愛する者を脅かされた唯の男だった。「皇后に指一本触れようとした時点で貴様はもう騎士ではない。ただの外道だ」 カインはそう言い捨てた後、そっと騎士の耳元で囁く。「哀れだな。お前如きが俺の女を抱ける訳がなかろう。彼女の正体は幻影の異能を使うアルトメ王国の元王女だ」 その小さな囁きはアルベラの耳にも届く。 自分の正体をバラしたカインの意図ははかりかねたが、とにかくカインが来てホッとしていた。 アルベラは急いで薄衣を羽織り、カインの側に来ると彼は一瞬だけ表情を緩めた。 彼女の無事を確認するように、そっとその肩へ手を添える。「怪我は? 怖い思いをさせてしまったな」 アルベラは小さく首を振った。「陛下が来てくださったから、大丈夫です」 その静かな言葉は、湖の水より澄んでいた。 カインの眼差しから怒気が少しずつ溶け、熱が宿る。 だが振り返った時、皇帝
last updateÚltima actualización : 2026-10-06
Leer más

17.初恋の人との再会

 アルベラの言葉は控えめで、けれど確かな温度を持っていた。 カインの胸に落ちた瞬間、火の粉が散ったかのように熱が走る。「お、お、おう。いや、その、当然のことだ!」 アルベラが目を瞬く。 カインは情けないほどに真っ赤だった。 アルベラは慌てる彼をしばらく眺めていたが、ふっとやわらかく微笑んだ。「陛下が来てくださったと時、本当に、心が救われました。あの方が、昔のことを持ち出した時に胸が少し苦しくなって⋯⋯」 アルベラの声が震えた。 その指が、衣の上から胸を押さえる。 娼館に落とされ、初めて頻繁に幻影の異能を使うようになった。 生み出す幻影は娼館を見学して自ら考えたものだが、自らも苦しめるものだった。 カインは息を呑み、思わずそっと一歩近づいた。 触れてしまいそうで怖かった。「君はよくやったよ」 カインがなんと慰めて良いか分からず発した短い言葉はアルベラの心の深くまで届いていた。 自分を罰するように娼婦レイラとして送っていた日々の意味のなさと恥ずかしさ。 そんな忘れたい日々がカインの一言によって癒されていく。 アルベラは焚き火の橙を映した瞳で、カインの顔をまっすぐに見つめた。「陛下がそう言ってくださるだけで、救われますわ」「そんな顔で礼を言うのは反則だっ!」「反則?」 アルベラは小首を傾げる。「いや、なんでもない! 忘れてくれ!」 カインは耳まで赤くし、焚き火に背を向けてしまった。 アルベラはその様子を見て、ほんの少しだけ心が温まるのを感じていた。 恐怖の余韻も、動揺もまだ消えてはいない。 けれど、カインがそばにいる、その事実だけで心が整っていくのを彼女は静かに感じていた。 その夜。 山の気温は急激に下がり、テントの外では風が木々をざわめかせていた。 アルベラは毛布をかけて横になっていたが、どうしても眠れなかった。(胸が、静まらない)
last updateÚltima actualización : 2026-10-07
Leer más

18.過去

時は遡ること七年前。 アルトメ王国にて、十一歳のアルベラ王女とオリバー王子は父親から驚くべき事実を聞いていた。 夜の城は静まり返り、蝋燭の炎が長い影を揺らしていた。 王の私室に呼ばれた双子の王子と姫は、互いに手を握り合いながら部屋の中央に立つ。「そなたたちが六歳の時に五年経つと異能が目覚めるという薬を飲ませている。そろそろ力が花開く時だ」 ルーカス・アルトメ、アルトメ王国の国王であり絶対権力者ーー双子の父親は得意げに言った。「異能ですか⋯⋯効果が出るまで五年なんて、随分と遅効性な胡散臭い薬ですね」 警戒心の強いオリバーは顔を顰め、そのような得体の知れない薬を飲ませた父を暗に責める。 六歳の自分たちがそんなものを飲まされた記憶はない。 つまり、何らかの飲み物に混入して二人に飲ませたという事だ。(まるで、毒を飲ませるようだな⋯⋯)「異能? それって魔法のようなものですか?」 好奇心の強いアルベラは目を輝かせて父に尋ねた。「魔法のようなものだよ、アルベラ。近年、クリフォード・ルートルが無闇に他国を侵略しているだろう。余はまだルートル帝国が小さな王国で、あの男が王子だった時から危険視していた」 クリフォード・ルートルは十二歳という若さで国王に即位した。 少年王だった彼はわずか三年でルートル王国を帝国と呼ばれるまでに大きくした。「流石、お父様だわ。五年も前から、もしものアルトメが攻められた時の対策を考えていたのですね」 アルベラは王族にしては素直過ぎる性格をしていて、その時も自分が国を守れる力を持ったのだとしか考えた。「父上、ちなみに異能とはどのようなものなのですか?」 キラキラ瞳を輝かせるアルベラとは対称的にオリバーの瞳は暗い。 オリバーは恐ろしい程に察しが良く、父親が自分たちをプロパガンダとして利用しようとしていると気がついていた。「それは、使い方と共に明日からレクチャーを受けてくれ。今日はもう遅いから二人とも寝なさい」 双子は手を繋ぎながら廊下を歩く。 
last updateÚltima actualización : 2026-10-08
Leer más

19.怒り

 朝靄がまだ城下の屋根にまとわりついているころ、王宮の門前には異様な静けさの中にざわめきが満ちていた。 民が列をなし、震える手で布に包んだ赤子を抱える者、脚を引きずりながら柵にすがる老兵、病の妻を背負ってきた男。 皆、疲れた目に希望の火を宿していた。 ただその希望は、オリバー王子の持つ回復の異能へ向けられたもの。 門の向こうで双子は、その人々の声を聞いていた。「どうか⋯⋯娘を」「この腕がもう一度働けば、家族を養えるんだ!」「王家の癒やしの力を恵んでください」 そこへ、国王ルーカス・アルトメが現れる。「城門を開けろ!」 あれから三年の時が経っても、毎朝城門の前に溢れる程の列ができ続けた。 オリバーはそっと耳を塞ぎたくなった。 声は聞こえるのに、心の奥で距離を感じる。 最近は、手足だけでなく胸の奥の温度さえ薄れていくようだった。 この力は使う度に、体の機能が奪われていく。 窓の外を見る妹は列の多さに感激している。「お兄様、今日もお兄様は大人気ね。どうして、私の力は誰も欲しがらないんだろう。私も回復の異能が良かったな」「絶対にダメだ!」 オリバーは思わず大きな声を出す。 アルベラが心配して近寄ってきた。「お兄様、もしかして具合が悪い? 顔が赤いわ」 アルベラがおでこをコツンとくっつけてくる妹に自分の気持ちを悟られたくない。 オリバーは本当はもう異能を使いたくなかった。 これ以上、使うと自分は壊れてしまう。 「ひどい熱! 私、みんなに帰ってもらうように言ってくるわ」 アルベラが慌てて立ち上がる。 けれど、一歩踏み出すより早く、その手首をオリバーが掴んだ。「ダメだ!」 掠れた声だった。 普段の彼からは想像もつかないほど必死な声音に、アルベラが驚いて振り返る。 オリバーの顔は、熱のせいですっかり赤くなっていた。
last updateÚltima actualización : 2026-10-09
Leer más

20.異能の秘密

アルベラは再び幻影の異能を使った。 オリバーの回復の異能を受けると一時は治っても、その後に重篤な副作用に苦しむという幻影だ。(人の健康を奪って元気になろうなんて奴らは、恐怖で苦しめば良いのよ。二度とお兄様を頼らせないわ) 城門の前の人間が一斉に城の前から消える。 ふらりと強い目眩と共にアルベラは座り込んだ。「アルベラ、今、異能を使ったね」 責めるようなオリバーの声に、アルベラは顔を上げる。 アルベラはオリバーの顔を見るなり泣き出してしまった。「お兄様が、ずっと苦しんでいたなんて⋯⋯今すぐお父様に薬の副作用の件を報告にしに行きましょう」「半年以上前に報告したよ。『王家の者とは民に尽くすために生まれてくる。その重荷から逃げることは許されない』って言い返された」  オリバーの悲しそうな顔を見て、アルベラは目に力を入れ必死に涙を止めた。 ずっと泣きたい気持ちを我慢して耐えて来たオリバーに対し、あまりに自分は情けない。「アルベラ、今、おそらく幻影の異能は使い続けると現実と夢の区別がつかなくなる可能性がある。使用は控えた方が良い」「異能の使用を控えた方が良いのはお兄様でしょ。お兄様、私がお父様に話をつけてくるわ。こんなのおかしい!」 アルベラはオリバーの静止を振り切り、国王の謁見の間にに突進する。「姫様、今日は如何されたのですか? ただいま陛下は謁見中でして」「まあ、こんな朝からお仕事して流石は民に尽くすルーカス・アルトメ国王陛下ね。でも、私は今は緊急性のある最重要の問題を抱えてるの」「少々、お待ち⋯⋯」 侍従が言い終わらない内に、アルベラは強引に扉を開けた。 ルーカス国王の横にはリアンダー・ソリアル卿がいた。 金髪に太陽のような瞳をした十八歳の若き近衛騎士だ。 貴族令嬢たちが騒ぐくらい見目麗しい騎士で、密かにアルベラもずっと憧れてた。 そんな彼に無礼を目撃されて少し恥ずかしくなるも、ここは引けない。「ソリアル卿、国王陛下に話が
last updateÚltima actualización : 2026-10-10
Leer más
ANTERIOR
1234
ESCANEA EL CÓDIGO PARA LEER EN LA APP
DMCA.com Protection Status