その後の移動は予定通りスムーズに進み、ヴェライユ陣営は二度目の野営の日を迎えていた。 山の夜は、火を焚いても肌寒い。 騎士たちが交代で見張りにつき、焚き火の周囲には簡素な鍋がひとつ据えられていた。 湯気の立つ鍋に、淡い香りがふわりと立ちのぼった。「まさか皇后陛下自ら、こんな山中で料理をされるとは」「旅の途中ですもの。できることをしたほうが、皆の疲れも和らぎますわ。このキノコは香りが強いから、こうして火にかけると甘い匂いが出てきますわ」 騎士たち恐縮気味に漏らすと、アルベラは静かに微笑んだ。 持ってきた食料はあったが、春とはいえ夜はまだ寒いので温かい汁物を出したいと思ったのだ。 そこで、彼女はアルトメが食糧難に瀕した時に身につけた知識で安全なキノコを採取した。 彼女が四歳の時に、大雨が続きアルトメ王国は食糧難に陥った。 アルベラは山にびっしり生えているキノコを食べれる物と食べられない物に選別する知識を国民に披露した。 一方、オリバーは誰も食べたことのない芋を持ってきて食べられるか試した。 アルトメの人々は芋を食べられるようになり、アルベラはオリバーの発想に感動した。 本来ならオリバーが次期国王になるべきだとアルベラ自身も思っていたが、異能の副作用でオリバーはひ弱で不完全な王子として姿を消す。 アルベラは毎時間のようにオリバーを思い出しては、自分が代わり消えるべきだったと感じ苦しんでいた。 彼女の手つきは迷いがなく、鍋をかき回す動作も流れるように滑らかだった。 何も食べられなくなったオリバーの為に、芋を柔らかく茹ですり潰しスープを作った思い出が蘇る。 カインのように万能でもないし、オリバーのように優秀でもない。 それでも、出来る事を確実にしてきたアルベラは、周囲から見ればとても万能で優秀な人間に映っていた。 風が静まり、焚き火の音だけが心地よく響く。 やがて、アルベラは味見をしてから頷き、椀によそった。「陛下、お待たせいたしました。山で手に入ったものだけですが、
Última actualización : 2026-10-21 Leer más