呆然とする私をよそに、翔太は固まったままの私の頬へ軽く口づけた。「ここ何日か、理乃の監視が厳しくてさ。抜け出して会いに行く暇がなかったんだ」理乃は私だ。私がここにいる。なら、この家の中にいる「私」は、誰?背筋がぞくりと冷える。目の前の男までもが、急に見知らぬ他人に思えてきた。黙り込んだのが気に入らないのか、翔太は顔を曇らせ、私の顎を乱暴につかむ。「言っただろ。理乃の前で騒ぎを起こすなって。妻の座以外なら、何だって叶えてやる」目に涙をためたまま、私は言葉を失っていた。涙に濡れた顔を見て、翔太の表情がふっとほどける。「わかったわかった。まったく、すぐ泣くんだから。いい子だ、あとでたっぷり可愛がってやるよ」急に吐き気がこみ上げた。翔太は今までずっと、こうやって私を欺いてきたのだ。本当のことを言おうとした瞬間、玄関の扉が開き、翔太は反射的に私を突き放した。「私」が、目の前に現れた。彼女は笑みを浮かべて言う。「悠実、来てたのね。どうして中に入らないの?翔太ったら、女の子を追い返してどうするの。さあ、上がって」翔太は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てた。「なんでこんなところに来たんだか。追い返そうとしていたところだ。俺たちの邪魔をするな」「私」は笑いながら翔太の手を揺する。「もう、翔太ったら。私以外の女の子みんなに、そんな怖い顔しなくてもいいじゃない」そう言いながら、「私」は歩み寄り、私の手を取った。視線が絡んだ瞬間、悟った。彼女は悠実だ。私たちは、身体が入れ替わっているのだ。問い詰めようと手を伸ばすが、悠実はぱちりと瞬きをしてみせた。「さあさあ、入って。面白い話をしてあげる」何か考えがあるのだと察し、私は黙ってついていった。翔太は少し慌てた様子で、後ろから追ってくる。「理乃、なんでこいつを家に上げるんだよ。水入らずの時間が台無しじゃないか」そう言いながらも、翔太は悠実の目を盗んで、そっと私の手を握ってきた。私は居たたまれず、その手を振りほどく。ソファに腰を下ろして、ようやく気づく。テーブルの上に、私と翔太のウェディングフォトが何枚も広げられていた。ゴミ箱に放り込まれたものまである。信じられない思いで、私は立ち上がった。「これ、どういうつもり?」翔太が、訝しげに私を見る。「理乃が
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