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第6話

Auteur: クレヨンブタちゃん
嬉しさのあまり、私は自分の顔をまじまじと見つめ、何度も頬に触れた。喜びの涙があふれる。私は、本当に自由になったのだ。

ちょうどそのとき、空港のアナウンスが流れた。

「790便をご利用のお客様は、お早めにご搭乗ください」

スマホには、翔太からの着信が数えきれないほど入っていた。きっと、もう気づいたのだろう。手紙も読んだに違いない。私は彼の連絡先を残らずブロックして、自分の夢を追いかけはじめた。

世界的に名の知れたウィーンのデザイン研究所が、私の才能に目を留め、デザイナーとして迎えたいと声をかけてくれたことがあった。けれど、翔太のそばを離れたくなくて、私はその誘いを断った。

それから3年。研究所は今もなお、私に手を差し伸べてくれていた。私は迷わず承諾し、海外転出届も出した。

ウィーンに降り立つと、研究所から迎えのスタッフが来てくれることになっていた。けれど、いくら待っても、ネームボードを掲げた人は見当たらない。

そのとき、後ろから誰かが私の肩を軽く叩いた。振り向いた私は、思わず固まってしまった。

「やあ、久しぶり」

黒いロングコートに身を包んだ相楽晃司(さがら こうじ)が
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  • 夫の幼なじみと入れ替わり、私は身を引いた   第9話

    帰国してからも、翔太は諦めなかった。小寺グループの強大な影響力を使い、街じゅうの広告ビジョンに私へのプロポーズ動画を流して、私が振り向いてくれるのを祈り続けた。晃司は、彼の実家のツテを使って、翔太が国外で女性を不法に連れ去った事件を世間に広めた。その間、私の名前も身元も、すべて完璧に伏せられた。翔太の愚かな行いがもとで、小寺グループの株価は暴落し、資金繰りも完全に行き詰まった。株は大量に売り浴びせられたうえ、今度は敵対的な買い集めに遭い、激しいマネーゲームの末に、巨大なグループはあっけなく経営破綻した。翔太の邸宅は抵当に入った。差し押さえの担当者が家を引き取りに訪れたとき、薄暗い地下室で虫の息になっている悠実を見つけ、救出した。悠実は翔太を告訴した。殺人未遂をはじめとする罪に問われ、翔太には長期の実刑判決が下ることになった。すべてを聞き終えても、私の胸に湧いたのは、ほんの少しの感慨だけだった。それでも、もう全部終わったのだ。半年後、晃司と私が共同でデザインした「煌めき」シリーズが、世界的なファッションランキングで1位に輝いた。授賞式の日、晃司は私の手を引いて、栄誉ある壇上へと上がっていった。受賞スピーチを終え、壇を降りようとしたとき、晃司が突然、私を引き止めた。彼は片膝をついて、片手にはスタッフから受け取った真っ赤な薔薇の花束を、もう片方の手にはまばゆいダイヤの指輪を差し出した。私は、呆然と立ち尽くした。晃司はまっすぐに私を見つめ、やさしく澄んだ声で言った。「理乃、ずっとずっと前から、君が好きだった。これからの人生を、君と一緒に歩いていきたい。俺と、結婚してくれませんか?」「受けて!」「結婚しちゃえ!」こらえきれずに、大粒の涙がこぼれた。私はうなずいて、そっと手を差し出した。「はい。喜んで」晃司は、世界でいちばん大切な宝物を手に入れたように、私をひょいと抱き上げ、嬉しそうにくるくると回った。プロポーズのあと、私たちは幸せな結婚式の準備を始めた。研究所の同僚たちも喜んで加わってくれて、招待状から披露宴の会場まで、花束のひとつひとつ、小物の配置のひとつひとつに至るまで、すべてが丹念に、美しくデザインされた。かつて晃司をからかっていた、あのヨーロッパ人の同僚が、彼を肘でつついて、またフランス語で言った。

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    彼にきっぱりと諦めさせるには、嘘をつくしかなかった。「この人は、私の婚約者よ。もうすぐ結婚するの。だから、二度と私たちの邪魔をしないで!」翔太は、崩れ落ちるように叫んだ。「そんなはずないッ!理乃、俺は信じない。俺たち、あんなに愛し合ってたじゃないか!ああああっ!」晃司は後のことを、駆けつけた警察とボディガードに任せた。そして、かけがえのない宝物を守るようにそっと私を抱き上げ、周りの目から隠すように、しっかりと包み込んでくれた。私は彼の胸に顔をうずめた。ようやく安全を実感できて、たまらず声を上げて泣いた。晃司は私を、ふたりで暮らす家に連れ帰った。ベッドにやさしく下ろすと、その脇に片膝をつき、心配そうに私の顔を覗き込んだ。「理乃、もういいんだ。泣かなくていい。大丈夫……全部、終わったから」しゃくり上げながら、私は尋ねる。「先輩……私が連れ去られたって、どうしてわかったんですか?」その話になると、晃司の顔に怒りがにじんだ。「いつもお昼を一緒に食べる約束だっただろ?君が出ていってしばらくして、何が食べたいかメッセージを送ったのに、返事がなかった。ちょっと心配になって、入口まで見に行ったんだ。そしたら、君のデザイン画が全部、地面に散らばってた。何かよくないことが起きたんだって、すぐにわかったよ。それで、ツテを頼って調べたら、君の元夫が連れ去ったってすぐにわかった」晃司が、私の頭をそっと撫でてくれる。「でも、もう大丈夫だ」私は顔を上げ、おそるおそる尋ねた。「先輩……知ってしまったんですよね。彼のこと……」「ああ。でもいいんだ。過去のない人間なんて、いないさ」やっぱり、春風のように穏やかでやさしい先輩だった。涙を拭って、私は深くうなずいた。「そうですよね。全部、もう終わったこと。ありがとうございます、先輩」ふと、晃司が口を開く。「さっき言ったこと、本当なのか?」「……え?」「婚約者って」真剣なまなざしが、私を見つめる。その瞳には、いつも私に向けられてきた、深くあたたかい想いが宿っていた。私は、耳まで真っ赤になった。「ち、違います。あれは、あの人に諦めさせて、二度と付きまとわれないように、わざと言っただけで……」「そうか」晃司の顔が、少しずつ近づいてくる。「君

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  • 夫の幼なじみと入れ替わり、私は身を引いた   第6話

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  • 夫の幼なじみと入れ替わり、私は身を引いた   第5話

    翔太が荷物を受け取り、封を開けた瞬間、1枚の書類がはらりと床に落ちた。離婚届受理証明書だった。それを見た悠実と翔太の表情が、同時に凍りついた。翔太はしゃがみ込んで拾い上げ、読んでみた。そこには紛れもなく、私と翔太の名前が並んでいた。彼は勢いよく、ウェディングドレス姿の悠実を振り返る。「理乃、どういうことだ?」悠実が説明する間もなく、彼女は突然、頭を抱えてうずくまった。翔太が慌てて支える。「どうした、理乃?どこか具合が悪いのか?」だが、彼の腕の中で顔を上げたのは、悠実自身の顔だった。翔太は弾かれたように、悠実を突き飛ばした。「悠実……?理乃?いったい、どういうことだ」悠実にも、何が起きたのかわからない。唇を震わせるばかりで、ひと言も出てこなかった。翔太は震える手で、荷物の中の手紙を開いた。【翔太へどうして悠実と身体が入れ替わったのか、私にはわからない。気になるなら、彼女に聞いてみたら?ただ、この数日、あなたが彼女にしたことも、私にしたことも、全部知ってる。翔太、あなたには吐き気がする。悠実にも感謝しなくちゃね。おかげで、あなたたちふたりの虫唾が走るような本性が、はっきり見えたから。結婚指輪もウェディングフォトも、あなたは全部彼女にあげたでしょう。だったら、私は身を引く。どうぞおふたりで、一生ふたりでしがみつき合って、末永くお幸せに!二度と、私を探さないで。理乃】翔太は、胸にぽっかりと穴が空いたような心地だった。信じられない思いで手紙を何度も読み返し、ようやく、私が本当に彼を捨てたのだと理解した。彼の目は血走り、狂気を宿していた。その表情を見て、悠実は思わず後ずさった。震える声で呼ぶ。「しょ、翔太……っ」翔太は大股で悠実に歩み寄り、細い首を力任せに締め上げた。「悠実!言ったよな。どれだけ騒ごうと構わない、だが理乃にだけは手を出すなと!理乃は俺の命なんだ。理乃に何をした?言え!言わなければ、死んだ方がマシだと思える目に遭わせてやる!」息ができず、悠実はただ必死に、翔太の手を叩くしかなかった。見かねたボディガードが、傍らから声をかける。「小寺社長、奥島さんが死んでしまいます!」ようやく理性が戻りかけた翔太の手から、力が抜けた。悠実は

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